#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

仕事に真剣に向き合う姿は、最高にかっこいい! 25人の10年間と未来の話を聞いて

現場に足を運ぶからこそ感じられる、匂い、音、空気。「温度感のある言葉として伝えられないと、記事に立体感が与えられない」

あるべきジャーナリストの未来像とは?そんな問いに、フォトジャーナリストとして日本や世界各地で取材を続ける安田菜津紀さんは、オンラインで簡単に情報が得られる時代だからこそ直接現場に赴くことの大切さを語りました。

5月31日から1ヶ月にわたり毎日開催してきた日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)10周年記念リレートークイベント『ジャーナリスト図鑑をつくろう!』公開インタビュー。1ヶ月で計25人のインタビューをお届けし、多くの方にご視聴いただきました。Dialogue for Peopleのフォトジャーナリスト・安田菜津紀さんに加え、運営委員7人が話し手となった4週目の様子を紹介します。(JCEJ運営委員:沼能奈津子)

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「届ける」まで考えられるのがジャーナリスト

「伝え方の手段が多様化している中で、なかなか伝わらないことを解消していくためには?」22日目の安田さんとのインタビューで、聞き手・日本テレビ三日月儀雄さんはこんな問いも投げかけました。安田さんは、日本で難民として暮らす方々の食文化について取材した経験を紹介しつつ、伝えるためには「カルチャーの力が必要」と答えました。食をフックにすることで、「難民」というくくりではなく、どんな人たちなのか、誰が作っているのかに興味を持ってもらえるのではないか。「自分から縁遠いものを手繰り寄せることができ、そのカルチャーの先にどういう階段をかけていくのかが(伝える上での)工夫のしどころ」と話してくださいました。

20日目の弁護士ドットコムニュース編集長・JCEJ運営委員の新志有裕さん(聞き手はローカルジャーナリスト・JCEJ運営委員の田中輝美さん)は、地方新聞社で整理部と記者の両方を経験。その後、ネットメディアの編集長として会社全体のマネジメントを担うなど、多彩な経験の持ち主です。「いい記者とは?」という田中さんからの問いかけに対し「自分の伝えたいことを届けたい人に届ける人」と述べつつも、届けることの難しさも話しました。田中さんは「ジャーナリストをやりたいという人で、”届ける”まで入っている人はあまり多くないような気がする」と指摘しました。

24日目は、田中輝美さんが話し手として登場(聞き手はライター・JCEJ運営委員の耳塚佳代さん)。田中さんは「地域に暮らすからこそ、伝えられることがある」という想いで、島根を拠点にローカルジャーナリストとして活動しています。講演などでは「島根の魅力を発信してくれてありがとうございます」と言われることもあるものの「魅力を発信しているわけじゃないんです」と言います。相手にとって価値がある情報でなければ、単に地域の魅力を知ってほしい!と言っても、独りよがの発信になってしまう。「過疎の発祥地」と言われる島根の価値をどう伝えていけるのかを考えた時に「人口減少時代のソリューションを書けば、他の人の参考になる」。「伝わる」ためには「なぜ発信するのか」を考えることが大切、と力を込めました。

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論より行動!変化を生み出す

21日目は、銀行員からスタートし、熊本日日新聞西日本新聞Google日経新聞NHKと変転を遂げてきたJCEJ運営委員・井上直樹さん(聞き手は新志有裕さん)。新しいもの好きという井上さんは、デジタル技術を駆使した報道に挑戦してきました。「デジタルジャーナリズム論」など、「論じること」は様々な場で行われていますが、井上さんがこだわっているのは「実際にやってみる、作ってみる」こと。地方紙記者時代には、天気予報をAIが記事化するという企画にも挑み、紙面に載せたところ他社の記者から声をかけてもらうなど反応が返ってきたとのことです。「発言の量に比べると、アクションが少ないんですよね。語るならやりましょうよ」と、有言実行の大切さを語りました。

23日目の耳塚佳代さん(聞き手はJCEJ運営委員・沼能奈津子)は、地方都市に生まれ、通信社などを経てアメリカでフェイクニュースやコミュニケーションを学ぶために大学院へ進みました。社会人として学び直す一歩を踏み出すには勇気がいるのではと問われると「行ってしまえばなんとかなる」と、まずは行動してみることで物事が動いていくと話しました。大学院生活については「授業に出た後は世界が違う風にみえるぐらい。価値観を揺さぶられる」と、学び直すことへの喜びや楽しさを教えてくれました。またメディアによって分断が生まれてしまっていることを危惧し、「海外の研究を日本に伝えるなどしてつないでいきたい」と述べました。

最後の話し手は、JCEJ代表で法政大学教授の藤代裕之さん。イベント最終日ということで、これまでのゲストが飛び入り参加して質問を受け付けるなど、時間を延長した拡大版でお届けしました。徳島新聞記者として厳しい現場にも立ち会ってきましたが、現在は教育の現場に。新聞社でよくあるOJTのように、教員が学生に「ただ教える」という関係性に疑問を投げかけ、あくまでも主役は学生なのだと強調しました。学生にも現場に関わってもらい、「イノベーティブな人を育てていきたい」。JCEJを立ち上げたきっかけは「いろんな人たちがメディアについて考える必要がある。変えていかなきゃいけないと思ったから」。この一ヶ月間のイベントで、多様なゲストの皆さんが、伝えることの難しさや楽しさを語ってくれた、と振り返りました。 

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10年間のメディアの変化、ジャーナリストの未来像、一人ひとりが持つ社会との向き合い方、仕事をする上でのこだわり。想像していた以上の面白すぎるお話を聞くことができました。

私自身は5月に、新卒で入った旅行会社から地域のベンチャー企業に転職しました。今回のリレートークの運営スタッフではありましたが、記者経験やメディア企業で働いたことがないわたしが関わっていいのだろうか…という思いもありました。でも、皆さんのお話を聞いて、「伝えること」は職業や役割に限らず、誰かと生きていく上でどんなことにも関わってくるし、自分も考えてもいいんだな、話してもいいんだな、と思うことができました。いろんな立場から話をするからこそ、新しい発見や気づきがあるのだと実感しました。

そして、仕事に真剣に向き合う姿は最高にかっこいい!わたしもそうなりたいなと強く思うことができた時間でした。ご協力いただいたゲストの皆さん、そして視聴してくださった皆さん、本当にありがとうございました!

 

<1週目のまとめ>

<2週目のまとめ>

<3週目のまとめ>