#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

当事者が「タグ」になる時代、誰もがメディアを持てるからこそ考えていきたい

「当事者っていうのが1つの”タグ”になる時代」。NPOの情報発信や困窮者向けの支援プログラム立ち上げに携わる田村真菜さんは、ソーシャルメディアの登場で増えている「当事者による発信」の課題やメディアの在り方について、さまざまな立場を経験してきたからこその視点で問題提起しました(聞き手はライター・小野ヒデコさん)。田村さんは、ニュース編集者やNPO法人ETIC.を経て、セラピストや作家としても活動。現在はNPO法人カタリバの困窮家庭にパソコンを無償貸与する活動などを通じて、当事者の支援に直接的に関わっています。

5月31日からスタートした日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)10周年記念リレートークイベント『ジャーナリスト図鑑をつくろう!』公開インタビューでは、大きくメディアが変化した10年の取り組みから、ジャーナリストの未来像を議論しています。

毎日を過ごしていると、目の前のことでいっぱいになってしまい「いま自分がやっていることって何につながっているんだっけ?」「目の前の仕事は、社会とどうつながっているんだろう?」と考えてしまいます。リレートークは、振り返るいい機会になっています。(JCEJ運営委員:沼能奈津子)

 

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自分も「被災者」のタグを付けていた?

冒頭の田村さんの言葉を聞いて、ヒリッとしました。それはわたしが「当事者」として自ら「タグ」をつけてきたからではないかと感じたからです。東日本大震災で被災者になりました。当時、高校の放送部として被災状況を撮り続けていたため、テレビ、新聞、ラジオなどの取材を何度も受けることになります。大好きなテレビに出られるじゃん!とはじめはウキウキし、取り上げられることで知り合いからも「なっちゃんすごいな!」と言われ、あれ、わたしすごい?となっていたと思います。

上京しても被災者であることは変わりませんでした。「レッテルを貼られた」なんて思ったこともあります。でも、実は自分から「タグ」をつけていたのではないか?と田村さんの言葉にハッとさせられました。「大変だったね、がんばってね」という言葉をかけられるのは、心地がいいんです。でも就活では通用せず、それは実力ではなかったことを学びました。

状況を知ってもらいたいという想いから、当事者として発信をした経験もありますが、それによって「発信しづらい当事者も出てくる」という田村さんの言葉を聞き、良いことばかりではなく、発信をした先の影響なども、誰もがメディアを持てる時代だからこそ考えていきたいと思いました。

問いを立て続けられるか

7日目に話し手として登場したのは、スマートニュースの藤村厚夫さん。聞き手のノンフィクションライター・石戸諭さんからは、「ニュースの中でいいものをすくい出していくことについて語り合うことが、ここ10年間でほとんどなかったんじゃないですかね」と自身の反省も含めた問題提起がありました。藤村さんは「事実が基盤になっているべきだと思うんだけど、それをどう説明し、解釈し、どう伝えていくのかということの価値が重い」と応じました。

8日目は、Yahoo!知恵袋の生みの親で、現在は図書館づくりに携わる岡本真さん(聞き手は社会学者・開沼博さん)が登場。岡本さんは、図書館300館に自ら足を運び、現場を見ることにこだわってきたといいます。「量は重視する。足で稼ぐ。優れているものを見るだけでなく、残念な事例を見ることも必要」と、愚直に続けることの大切さについて語りました。また、ジャーナリストは「文章屋さんではない」と言い切り、「問いを立て、持ち続けられる」のがジャーナリストだと話しました。10日目の朝日新聞依光隆明さん(聞き手は沖縄タイムス・与那覇里子さん)は、40年の記者経験の中で、常に「論とファクトを分けることを心がけている」と述べました。

 

着眼点は誰もが持てる

10日目の香港在住コラムニストの富谷瑠美さん(聞き手は足利経済新聞編集長・山田雅俊さん)は、「ジャーナリストとは?」の問いに「自由に発信し、責任をもてる人」と答えました。アクセンチュア日経新聞電子版、リクルートを経て、コンサルとしてのビジネス経験、ネットメディアの運営といったスキルや考え方を身に付けてきた富谷さん。「ジャーナリストがどうやって育っていくのか?」というJCEJ運営委員新志からの質問には、「専門性とか好きなものが先にあって、あとから記事でどう書くのかとかファクトチェックをどうするのか、そういう方向から行くのがいいかもしれないですね」と回答しました。

11日目に登場したのは、データビジュアライゼーション実務家/研究者の矢崎裕一さん(聞き手はJCEJ運営委員赤倉)。データは公開されているからこそ「独自の着眼点を持って、可視化を使って発信して」みることで、「反応をしてもらえたり面白くなってきたりする」。「着眼点は誰もが持つことができる」と、小さいことから始めてみるのが大切だと語ってくれました。敷居が高いと思われがちなデータの扱いについて「データと仲良くなれればいいですね」と赤倉が述べました。

ゲストの皆さんが一度立ち止まり、10年を振り返ることで見えてくる課題や今後の可能性を聞いていると、振り返ったからこそ「良くしたい」が生まれ、社会をよくするためのエッセンスになるのではないかと思いました。

いよいよ折り返し地点に来たJCEJリレートーク。3週目の月曜日(6/14)の話し手は、『ルポ 百田尚樹現象』などで知られるノンフィクションライター・石戸諭さん。6/15(火)以降もフォトジャーナリストの安田菜津紀さんなど、多彩なゲストを迎えてお送りします!チケットは、下記のリンクから購入いただけます。是非ご参加ください!

【チケット】日本ジャーナリスト教育センター10周年記念「ジャーナリスト図鑑」プロジェクト | Peatix

6/28まですべてのトークが視聴できます。書籍つきチケットは値段が異なるものでも内容は同じですが、書籍の作成費に充てる「応援チケット」として複数用意しています。よろしければご支援いただけると幸いです。

 

<3週目の話し手 / 聞き手 / 進行(JCEJ運営委員)>
• 6/14(月)22:00〜:ノンフィクションライター・石戸 諭さん/NHK・足立 義則さん/藤代 裕之
• 6/15(火)20:00〜:ローカルジャーナリスト(元河北新報記者)・寺島 英弥さん/アカデミック・リソース・ガイド・岡本 真さん/田中 輝美
• 6/16(水)20:00〜:足利経済新聞編集長・山田雅俊さん/DANRO編集長・亀松 太郎さん/新志 有裕
• 6/17(木)20:00〜:ドキュメンタリー監督・岸田 浩和さん/朝日新聞記者・依光 隆明さん/井上 直樹
• 6/18(金)20:00〜:フォトジャーナリスト・安田 菜津紀さん/日本テレビ・三日月 儀雄さん/赤倉 優蔵
• 6/19(土)10:00〜:デザイナー・清水 淳子さん/作家、NPO支援・田村 真菜さん/耳塚 佳代