6月19日(金)〜6月21日(日)に行われた「ジャーナリストキャンプ2015浜松」では、参加者が静岡県浜松市を取材して、その成果を「THE PAGE」で公開しています。
参加者レポート第2弾として、小野ヒデコさんのレポートをお届けします。小野さんは浜松にいる在日ブラジル人を取材しました。作品は「それでも彼らは高く飛ぶ −10代ブラジル人の今−」です。小野さんは何を感じたのでしょうか。
▼一度は参加を諦めかけた
元々メディアとは無縁の仕事をしていましたが、「本当にやりたいことをしよう」と思い今年ライターに転身しました。ただライターになりたいと言っても、何をどうしていいかわからない。最初はどこかちゃんとした場所で学んだ方がいいのではと思い、ライター・編集系の学校を数件回って見てみましたが、「ここだ」という所が見つからずにいました。 そんな中見つけた「ジャーナリストキャンプ」の募集。短期実践型で魅力的でしたが、募集要項の「原則記者歴3年以上」という一文を見て、「無理だ」と思い、一度は諦めました。そんな中、キャンプ経験者の先輩からメールが届きました。「ジャーナリストキャンプは一流どころから指導を受けられる良い機会です。社会人経験があってからのライターキャリアスタートですからちょうど良いと思います」
それでも迷っていましたが、「ハードルが高いと思うならなおのこと参加した方がいい」という言葉に後押しされ、ダメ元で応募してみることに。ライターになりたい気持ちを熱心に語ったところ、選考通過のメールが届きました。その時の気持ちは「選考通っちゃった・・・」というもの。キャンプに参加できることの喜びと、ついていけるのかという不安を同時に感じ、正直フクザツな気持ちでした。
▼テーマ決めに苦戦
デスクは朝日新聞記者の依光隆明さんでした。今回で3度目のデスクを務める依光さんと事前にお会いした時、まず言われたのが、「このキャンプ、大変なんだよ」という一言。具体的に、何がどう大変なのか全く想像がつかないものの、キャンプ中に手空きになることだけは避けたいと思い、事前準備でアポ取りや下調べを行いました。
(写真:ブラジルのお祭り用の“田舎の農民メイク”をしてもらっている場面)最初に選んだテーマは「在日ブラジル人の発達障害」。“日本人とブラジル人で発達障害の発症率が異なるのか?”という問いを立て、それが先天的なものなのか育った環境に左右されるものなのかを立証していきたいと思ったのですが、ブラジル本国の発症率データがとれませんでした。また浜松ではNPO団体や学校を訪問して発達障害をもつ児童についての情報収集をしたものの、本人や家族の方には言語やプライバシー上、直接取材することが難しく、記事にするのが不可能と判断しました。そこで、「ブラジル人の中のホワイトカラーとブルーカラー」、「在日ブラジル人に“居場所”はあるのか」などのテーマを色々考えたものの、どれもピンとこず…
その一方で、取材を進めていくうちにブラジル人が日本の学校や社会で適応できずに苦しんでいるという事実を知り、徐々に「ブラジル人の現状を多くの人に知ってもらいたい!」と思うようになりました。
▼気持ちだけが前のめりに
しかし、実際に原稿を作る段階でぶち当たったのが「何を軸にするか」が中々定まらないという壁。漠然と「浜松にいる在日ブラジル人の現状を伝えたい」という想いはあるものの、ピントが絞れずにいました。そして、伝えたい気持ちだけが前のめりになっていきました。テーマが定まらない中でのキャンプ中の夜ミーティングでは厳しいご指摘を多々いただくことに…「何を伝えたいのかわからない」
「タイトルから話の流れが見えてこない」
「取材してその記事を並べるのだったら誰にでもできる」今振り返ると、「集めた情報を全部織り込みたい」という気持ちが強く、それが読者に届くか、面白いと思ってもらえるかという配慮が欠けていたと思います。締切直前までデスクと何度もやりとりをし、最終的に対象を10代ブラジル人のみに絞ることでテーマをより明確にして仕上げました。漠然と取材を重ねていくのではなく、問題意識を持ち「これだ」と思うものを掘り下げていくことでより深く読者に刺さる記事になるのだということを学びました。
終わってみて思うことは、依光デスクはそれを全て踏まえて上で、好きにやらせてくださったということです。未熟な提案や意見を決して否定せず、「思うようにやったらいいよ」と繰り返し言ってくださったのは、経験値のない私に自信と達成感を与えようとして下さっていたからだったのだと。そうして完成した初署名の記事は、ライターを目指す私にとっては忘れられない作品となりました。
▼世界が、価値観が、広がる
キャンプに参加してよかったことは多々ある中で、こうした「出会い」は宝物になりました。JCEJをはじめ、デスク陣、いっしょにやり遂げた仲間、取材に協力してくださった方、そして過去のキャンプ参加者の方など各業界で活躍されている方と知り合えたことで新たな世界を知ることができました。キャンプ自体は2泊3日だけでしたが、そこから広がる輪は無限大!色々な縁とタイミングがあって参加したジャーナリストキャンプで得た経験と人は一生モノになると思います。<小野ヒデコプロフィール>
おの・ひでこ 1984年生まれ。自動車メーカー、アパレル会社勤務を経て2015年ライターに転身。ジャーナリストキャンプへは「取材の本質を体得したい」と思い参加した。<関連リンク>
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