#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

『「がん」などのインターネットの検索結果で「信頼できる医療情報」を手に入れるために知っておきたいこと』(朽木誠一郎) #ジャーナリズムアワード 出展作品11

1月28日(土)に東京・法政大学で行われる「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」(主催:日本ジャーナリスト教育センター、共催:法政大学社会学研究科)の作品を紹介します。今回は、ライター/編集者の朽木誠一郎さんがまとめた「信頼できる医療情報」に関する記事です。

出展作品11 『「がん」などのインターネットの検索結果で「信頼できる医療情報」を手に入れるために知っておきたいこと』(朽木誠一郎)

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<作品概要紹介>

インターネット上の医療情報の問題点が注目を集めた2016年。では、どうすればインターネットから信頼性の高い情報を手に入れることができるのか。この記事では、一次資料と二次資料の区別、記事のどこをどう確認するべきかのポイントなどを紹介しています。

当日の発表では、追加調査の結果として、ドメインによる判断の基準と限界、医療メディアの現状、そもそも医療メディアとユーザーはどのような関係であるべきか、なども発表できればと思います。

 

<作品へのリンク>

「がん」などのインターネットの検索結果で「信頼できる医療情報」を手に入れるために知っておきたいこと

「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の作品応募に関しては下記のブログを参考にしてください。

【一般参加者について】一般参加者は、作品展示を見ながら出品者と交流、賞を決定する投票を行うことが出来ます。参加費は1,000円(受付でお支払ください)、学生は無料です。詳しくは下記のブログをごらん下さい。

地域の外に伝えるための「翻訳能力」を身につけよう 「東北ローカルジャーナリスト育成事業」レポート

「ローカルジャーナリストの役割は、地方と都市をもう一度つなぐこと」。島根県を拠点に「ローカルジャーナリスト」として活動する第一人者・田中輝美さんは、地域のニュースを全国に届けるには、取材・執筆力だけでなく、外に伝えるための「翻訳能力」が欠かせないと話します。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が開催した「東北ローカルジャーナリスト育成事業」(地域の魅力を再発見するには)での田中さんの講義詳細をお届けします。

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「一方通行」のニュース

最近、印象に残った地方のニュースはありますか?あらためて聞かれると意外と難しいのではないかと思います。

実際に「地方」「ニュース」のキーワードで、インターネット検索してみました。日本最大のニュースサイト、Yahoo!の地域ニュースのページが出てきます。さらに見ていくと、水難事故、トラック転落など......事件や事故ばかりですね。Yahoo!ニュースは月152億PVを誇りますが、地域ニュースは全体の1割です。1割の中でも事件事故がほとんどと言ってもいい状況です。

 

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もちろん新聞やテレビでも、地方ニュースの枠はありますが、マスメディアは基本的に2層構造になっています。テレビなら大都市にいわゆる「キー局」が、新聞なら全国紙の本社が東京にあります。その下に地方支局があり、情報は一旦東京に集められてから、もう一度各地に配信されます。

地方ニュースの枠はとても小さく、それを47の地域が競い合っている、という構造です。全国放送の中で、自分の地域が出てくることは本当に稀です。

その地域に特化した地方紙やテレビのローカル局も存在しますが、基本的には地域内に情報を共有するのが目的です。地方から全国ではなく、東京で起きたニュースを地方に持っていく、というビジネスモデルです。基本的に、ニュースは東京から地方への「一方通行」になっています。

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そこで、東京の視点のニュースが多くなります。首都圏で雪が1センチ積もって大変だ、というニュースを地方の人が見て「いやいや、こっちじゃ毎日だよ」ということが、よくありますよね。

これは、仕方がないことでもあります。例えば地方紙やローカルメディアの顧客は、地域の「外」にいるわけではなく「中」にいます。顧客がいる地域の「中」に向けて情報を発信するというビジネスモデルで回っているので、「外」に向けて発信することへのインセンティブがどうしても弱くなります。

「東京目線」で切り取られる地方

Yahoo!以外のウェブではどうでしょうか。地方の記事をさらに調べてみました。

私が暮らす島根県には、海士町という離島があるのですが、10年間で400人以上のIターン者が訪れた「改革の島」として有名です。以前、海士町がどんな風に書かれているか検索してみてみたことがあるのですが、ほとんどが「町長がすごい!」「俺たちの知らないパラダイスの島があった」というもの。似たような切り口の記事ばかり並んでいました。

それはなぜかというと、新聞やテレビと同じく、ウェブメディアも結局は東京が拠点で、そこに記事を書くフリージャーナリストも、ほとんどが東京にいます。地方に来て記事を書くときは「旅人」としてやって来て、短期間で「非日常」を切り取って帰っていくことになるのです。

もちろん、外から来たからこそ見えるものがあるので、否定をするつもりはありません。ただ、この逆の、地方から全国への流れがあまりにも弱すぎることが問題だと思っています。だから東京にいると地方のニュースは伝わってこない。もっとこの流れを強化したいし、すべきだと感じています。

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地方ニュースには、ニーズがない?

流れが弱いということは、地方ニュースにはニーズがない可能性もありますよね。

ところが、実際Yahoo!ニュースに聞いてみると、地域別ニュースへの反応は、エンタメやオリンピックにも勝てるくらい良いそうです。Yahoo!も「地元のリアル」を書いてくれる人を求めていますが、今のところ書ける人がいない。だから事件事故の情報しかないというのが現状だと思います。

内閣府の調査によると、東京に住む人の4割が移住を希望しています。彼らが困っていることは、地方の情報が十分でなく、情報の入手先がわからないことだ、という結果も出ています。地方の情報はニーズがないわけではなく、求めている人がいるのに届いていない状況だと言えます。

記者時代に感じたジレンマ

私が以前勤めていた山陰中央新報社は、島根県松江市に本社がある地元紙で、シェアは7割近くあります。読者からの反応も大きくやりがいがありましたが、東京支社で勤務した際、大きなジレンマを感じました。

地方紙は、県民に情報を流すのが仕事。東京にいて「島根にはこんな面白いことがあるんだよ」と言っても、別の地域に伝えるチャンネルが全くありませんでした。

東京の人は、びっくりするほど地方に興味がないんだ、とも感じました。地方に住んでいると、地方と東京の両方が見えますが、東京の方にはあまり地方は見えていないんですね。それが悪いといいたいわけではなく、地方のニュースが東京に届かないという構造があるので、知らないことには興味の持ちようがないということだと思います。

地域の中にニュースを届けることの意義を感じながらも、ローカルメディアってなんだろう、と問題意識を持つようになりました。

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そんな時、山陰中央新報と沖縄琉球新報が組んで、「環(めぐ)りの海」という合同企画に取り組む機会がありました。領土問題について書いたのですが、「全国紙にできないこと、地元の私たちだからできることは何だろう」と考え、徹底して「地元の視点」にこだわりました。その化結果、新聞協会賞を頂くことができました。

その時「ローカルジャーナリズム」の可能性に気づきました。自分たちが今ここに暮しているからこそ、書けることがある、と感じました。そして、届けようと思えば、ソーシャルメディアなど、手段がないわけではありません。

 外とつながるための「編集力」

ローカルジャーナリストの役割は、地方と都市をもう一度つなぐことだと思います。

取材と執筆の能力はもちろん必要ですが、地域の外にニュースを届けるために「編集」する技術が必須です。地元にいながら執筆しつつ、地元の魅力を外に伝える「翻訳能力」をいかに身につけていくかが、外とつながる上でのヒントです。

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

1.「自分」ではなく「相手」の興味

まず、「自分」ではなく「相手」にとって魅力だと思うことを考えてみてください。それはターゲットが誰かによって変わります。自分がいくら面白いと思っても、相手に読んでもらえなければ、ウェブでいうとクリックしてもらえなくては届きません。「この人に届けたい、どうすればいいだろう」と思って視点を変えて考えてみる。それが自分の中の情報を「編集」することになり、結果的に外に届く情報につながります。

 

2. 「なぜ」を「深堀り」する

「なぜ面白いのか」をきちんと深掘りすることも、外の人にとっての価値の発見につながります。

例えば、この講座の会場である秋田県横手市は、「横手やきそば」や「かまくら」が有名ですが、それだけ書いても、すでに知られている情報なので誰もクリックしません。

例えば、なぜここまで地域資源となったのかをきちんと書くことで、自分の地域をPRしたい、地域の資源がうまく生かされていない、と悩んでいる人たちにとっての普遍性が生まれます。「かまくら、すごいんです!」と言ったところで、「かまくらに興味はありません」で終わってしまいます。「なぜ」を追求してみることが大切です。

 

3. 読者によって書き分ける

読者や媒体によって、違う視点で書き分けることも大切です。私もいろんな媒体に寄稿していますが、それぞれの媒体に合わせて違う形で出しています。

例えば、島根県の一畑電鉄がやっている体験運転の記事を書いた際、「日経グローカル」には、この事業がどうやって成り立っているかという事業ベースの視点で書きました。一方ヤフー個人では、体験運転を実現させた運転手の物語として個人にフィーチャーしました。読者は誰で、どんな点に興味を持つかを意識しながら書き分けています。

「よそ者」の視点で

とは言え「地域の魅力を再発見する」ってそんなに簡単ではないですよね。私も苦労の連続ですが、トレーニングしていくしかない!と思っています。

まずは、アンテナを張ることです。日常にあるちょっとした「へぇ」や「すごい」という感情が、地域を再発見するヒントになります。いつもの出勤ルートを少し変えてみたり、他の土地に出かけてみたりするのも良いと思います。

私自身も、自分の地域の魅力には気付かないことが多いので、外から来た人には必ず「何が面白かった?」「何に驚いた?」と聞くようにしています。

よそ者が来ただけで、普段とまったく違う風景を見せてくれます。その時に「へぇー」で終わらせず、なぜすごいのかを考えれば、そこに必ずヒントがあります。そして、それを誰に届けたいのかを考えることも同時にやってほしいと思います。毎日トレーニングすることで、力が少しずつ付いていきます。

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みなさん一人一人が、自分の地域の発信を担う「ローカルジャーナリスト」になってほしいと願っています。47都道府県にローカルジャーナリストがいれば、素敵ですよね。東京と地方の間で情報が循環してもっといい社会になります。よく「田中さんは島根の魅力を届けたいんですね」と言われます。間違いではありませんが、それ以上に、ローカルジャーナリストとしての活動が「東京一局集中の是正」という課題の解決につながると信じています。ぜひ一緒にチャレンジしましょう。

 

<講師プロフィール>

田中輝美(たなか・てるみ):1999年、山陰中央新報社入社。琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海−竹島尖閣」で日本新聞協会賞を受賞。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)運営委員も務める。2014年、「ローカルジャーナリスト」として独立。著書に『ローカル鉄道という希望:新しい地域再生、はじまる』など。

 

本講座は、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環として行われています。

 

 

 

『マニフェストスイッチ沖縄』(早川聖奈・沖縄タイムス・青木佑一) #ジャーナリズムアワード 出展作品10

1月28日(土)に東京・法政大学で行われる「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」(主催:日本ジャーナリスト教育センター、共催:法政大学社会学研究科)の作品を紹介します。今回は、沖縄県議選や参院選候補者の理念や政策を比較・検証できる「マニフェストスイッチ沖縄」です。

出展作品10 『マニフェストスイッチ沖縄|未来はあなたが決める 沖縄県議選・参院選2016』

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<作品概要紹介>

沖縄県議選や参院選の情報を分かりやすく紹介し、政治を身近に感じてもらえるよう、立候補者の理念や政策を比較・検証できるサイト「マニフェストスイッチ沖縄」を企画・制作。県議選では全立候補者72人に政治家を志した理由、力を入れる政策など6項目のアンケートを実施し、全13選挙区ごとに政策と顔写真を掲載。地図上で一目で候補者が分かるコンテンツ「政策マッピング」も制作し、自分の地域の立候補者がどんな政策を訴えているか、地域の課題が何かを一目で分かるようにした。

サイトは単に政策のみを提示するだけでなく、自分の暮らす地域や生活と選挙とのつながりを実感してもらうため、テーマを「未来はあなたが決める」とし、選挙の歴史を当時の資料や印象的な写真を使い、現在までをなぞった。公開から投票日までの約2週間で25万PVを記録し、TwitterFacebookなどでも多く拡散された。

 

<作品へのリンク>

マニフェストスイッチ沖縄|未来はあなたが決める 沖縄県議選・参院選2016

「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の作品応募に関しては下記のブログを参考にしてください。

【一般参加者について】一般参加者は、作品展示を見ながら出品者と交流、賞を決定する投票を行うことが出来ます。参加費は1,000円(受付でお支払ください)、学生は無料です。詳しくは下記のブログをごらん下さい。

コラボ生まれる「出会い系」 ジャーナリズム・イノベーション・アワード2年連続受賞の2人に魅力を聞く

ネットにおけるジャーナリズムの頂点を決める「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の開催が1月28日(土)に迫っています。今年で3回目の開催となりますが、このアワードはどんな人がどんな目的で参加しているのでしょうか? 2回目の昨年に優勝した首都大学東京准教授・渡邉英徳さんと沖縄タイムス記者・與那覇里子さんは、一昨年のアワードでの縁がきっかけでタッグを組みました。そんな2人はアワードを「出会い系」と言います。果たしてその真意とは?

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写真:2016年表彰式 左から2人目が與那覇さん、4人目が渡邉さん

第1回目、 渡邉さんは「台風リアルタイム・ウォッチャー」で最優秀賞、與那覇さんは「地図が語る戦没者の足跡」でデータジャーナリズム特別賞を受賞しました。 そのときの出会いがきっかけで、GIS沖縄研究室も加わり「沖縄戦デジタルアーカイブ」を発表。昨年のアワードでは見事、最優秀賞を獲得し、 2年連続の受賞となりました。

 

――2年連続で受賞されたお2人ですが、まずは前回を振り返ってどんな感想を抱きましたか?一昨年とどんな違いがありましたか?

那覇:去年の方が参加者が多く、会場の熱気が2015年と比べて倍くらいに感じました。決戦プレゼンに残った日経新聞の「データディスカバリー」や、宮崎てげてげ通信(テゲツー!)の「2015年テゲツー!で最もよまれた記事は?」など、印象に残る作品がいろいろありましたね。

また、去年の自分たちのチームのどん欲さも記憶に残っています。一昨年は1人での参加だったので心細かったのですが、去年は弊社の上司にも来てもらってハッピを着て、計5人で歩く人歩く人に声をかけまくっていました。

また、作品のメッセージが「70年前を追体験してもらう」というものなので作品を実際に触ってもらえるよう、iPadも用意し、当時の人たちがどのように逃げたかなど、じっくりと見てもらえるような仕組みを作りました。いろいろ入念に準備して挑み、まさに「大人が必死」という感じでした。

渡邉:ぼく自身はもともと、「沖縄戦デジタルアーカイブ」をアワードに出すつもりはなかったんです。一昨年グランプリをとっているので、2年連続で出すのはちょっとなあと思っていました。

2年連続で参加して、同じような技術を元にしたコンテンツで賞をもっていく人みたいになると、ジャーナリストでない自分にとっても、ジャーナリストの方々にとってもよくないだろうと。

とはいえ、「沖縄戦デジタルアーカイブ」は、一昨年の表彰式で與那覇さんとお会いしたのがきっかけで生まれた作品なので、アワードに御礼をするという意味で、もう一度参加してみることにしました。

印象に残っているのは、やっぱりやまもといちろうさんです。普段の感じじゃなくて、すごく丁寧にコメントしてらっしゃいましたよね。

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写真:2016年は50作品の応募があった

――会場に所狭しとブースが並んで、どのチームも参加者と積極的にコミュニケーションをとっていて独特の熱気がありますよね。與那覇さんと渡邉先生のチームの場合、その「どん欲さ」はどこから湧いていたのでしょうか?

那覇:やっぱりコンテンツに対する思いがそれぞれ強くあったので、伝えるために何ができる、真剣に考えた結果だと思います。

渡邉先生とは東京と沖縄で距離があるので、アワード本番までに実際に会ったのは3回だけでした。毎日のようにFacebookで遅くまで連絡を取り合って制作しました。そんな中、久しぶりにお会いして、その熱量をぶつけられるリアルな場所があったことで盛り上がったんだと思います。

渡邉:最初は出す気がなかったと言いましたが、始まったら始まったで、そこはやっぱり勝負ですから、本気になりましたよね。展示にもプロジェクターを使って、多くの人の眼に留まるようにしました。共同受賞したGIS沖縄研究室の渡邊康志先生はくじ運が強いらしいので、ブース決めのくじを引いてもらったりとか(笑)、そういうこともやりました。

 

アワードで広がる「出会い」の輪

――與那覇さんは前回アワードでも新たな出会いがあったんですよね?

那覇:はい、展示をセッティングし終えた後に開始まで少し時間があって、近くのブースにいた早稲田大学マニフェスト研究所さん一緒にランチにいったんです。そこでのご縁がきっかけで「マニフェストスイッチ沖縄」を共同制作しました。

そして、渡邉先生に紹介してもらった研究室の院生の早川さんもいっしょになって、若い人にどうやったら見てもらえるか、考えて考えて作りました。渡邉先生ともアワードで出会っているので、本当にアワードの出会いから生まれた作品ですね(笑)

結果は、選挙前日から当日までアクセスが殺到して、こっちがびっくりするくらいでした。政治のページがあんなに見られるとは思いませんでしたね。

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写真:與那覇さん

――渡邉先生は、前回のアワード以後はどんな取り組みに力を入れられていたのでしょうか?

渡邉岩手日報さんといっしょに作った「忘れない」という震災犠牲者の行動記録のプロジェクトが、新聞協会賞を受賞したんです。台風リアルタイムウォッチャーや沖縄戦デジタルアーカイブで使った手法を発展させて作ったものです。新たな価値観を示すとか、オルタナティブを示すという目的でやっていた手法が、おそらく国内でいちばん伝統のある賞を獲得したということで、僕はとても喜ばしいことだと思っています。

また、マッピングプロジェクトと並行して、白黒写真を早稲田大学が開発したAI技術で自動的に色づけするというプロジェクトを進めています。これには非常に大きな可能性を感じています。白黒写真だと「遠く離れたもの」と感じていたものが、カラーになることで急に迫ってくるんです。例えば、この画像を見てください。

アニメ映画「この世界の片隅に」の原作にも、この写真と似たアングルのきのこ雲が登場します。この写真はTwitter上での反響がとても大きく、たくさんのコメントがつきました。

カラー化すると、ユーザのタイムライン上で眼に留まり、色んな思いを呼び起こすような力が、写真に宿る気がします。そして色付けされた写真には、不思議と何かコメントしたくなるようで、SNSの反応も違います。人々を「昔」の出来事に近づけてくれる手法として、ある意味ジャーナリスティックなやり方とも言えるかもしれないです。

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写真:中央が渡邉さん、インドネシアでの活動中に

いつまでもオルタナティブ気分ではいられない

――最後に改めて、お2人にとってアワードとはどんな存在でしょうか?

那覇:地方から東京にいったときのいい「出会い系」と思っています。ネット上のコンテンツは遠くからでも拝見できますが、生でどういう人がつくっているか分かり、交流できるのはすごく貴重な場だと思っています。いつも話してる人とぜんぜん違う人が集まってくるので、刺激を受けてヒントももらえます。

また、とても「フラットな場」です。普段どこで発信しているかといった背景の文脈が取っ払われて、どういう思いで何を作ってきたか、そしてそれをどう伝えるかが問われる、そんな場だと思います。

渡邉:既存のジャーナリズムに対するオルタナティブとして、初回と2回目は開催されたと思います。でも考えてみれば、例えばうちの院生や学生を見ていると、既存メディアの代表格である新聞を読んでいる人はあまりいないし、テレビも見ていない。ぼくも42歳ですが、気がつけば新聞やテレビを見なくなっている。

ではどんなところで情報を得ているのかといえば、もしかするとジャーナリズム・イノベーション・アワードで出会っているようなメディアを通してかもしれない。いまや、もはやなにがメインストリームで、なにがオルタナティブなのか、よく分からないというわけです。

つまり、ジャーナリズム・イノベーション・アワードは、当初はオルタナティブな場だったけれども、知らず知らずのうちに「主流」になっているという危険性をはらんだ場のようにも思えます。これは褒め言葉と批判との両方の意味を含んでいますが。少なくとも、いつまでもオルタナティブのような気分でいられないのではないかと思います。

(聞き手・構成:田中郁考)

 

 

1月28日に開催する「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」は、今回で3回目。作品の作り手と受け手が直接交流し、優れた作品をみんなの投票で選ぶイベントです。組織や業界の垣根を越えて、切磋琢磨する仲間と出会い、語り合える場にしたいと考えています。ぜひ、あなたの作品を応募してみませんか。この作品が良かった、という推薦も受け付け中です。

作品応募は専用フォームにて受け付け中です。

応募要項などの詳細は、下記記事を参照ください。

jcej.hatenablog.com

『PCデポ問題』(ヨッピー) #ジャーナリズムアワード 出展作品09

1月28日(土)に東京・法政大学で行われる「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」(主催:日本ジャーナリスト教育センター、共催:法政大学社会学研究科)の作品を紹介します。今回は、ライターのヨッピーさんによる「PCデポ問題」です。

出展作品09 『PCデポ問題』(ヨッピー)

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<作品概要紹介>

テレビ雑誌問わず広く社会問題になった「PCデポ問題」。発端となったのは個人のTwitterの書き込みを最初に取り上げ、現場に同行し、元・現従業員の証言なども集めた上で背景を解説したのが下記の記事です。

一個人による書き込みが、これまた一個人であるライターに取り上げられたことで広く読まれ社会問題化する、情報の流通経路の新しさと、問題の発覚から公開まで1週間というスピード感はジャーナリズムの流れとして全く新しいものだったように思います。

 

<作品へのリンク>

PCデポ 高額解除料問題 大炎上の経緯とその背景

「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の作品応募に関しては下記のブログを参考にしてください。

【一般参加者について】一般参加者は、作品展示を見ながら出品者と交流、賞を決定する投票を行うことが出来ます。参加費は1,000円(受付でお支払ください)、学生は無料です。詳しくは下記のブログをごらん下さい。

『The Data Journalism Handbook 日本語版 翻訳プロジェクト』 #ジャーナリズムアワード 出展作品08

1月28日(土)に東京・法政大学で行われる「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」(主催:日本ジャーナリスト教育センター、共催:法政大学社会学研究科)の作品を紹介します。今回は、「The Data Journalism Handbook 日本語版  翻訳プロジェクト」です。

出展作品08 『The Data Journalism Handbook日本語版』(The Data Journalism Handbook 日本語版 翻訳プロジェクト)

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<作品概要紹介>

データ・ジャーナリズムに関わるヨーロッパのジャーナリスト達が執筆した The Data Journalism Handbook 。データ・ジャーナリズムの事例紹介やデータ収集、プレゼンテーションの手法など、実践的なガイドブックになっています。このドキュメントの日本語翻訳版を出品します。

 

<作品へのリンク>

データ・ジャーナリズム・ハンドブック

「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の作品応募に関しては下記のブログを参考にしてください。

【一般参加者について】一般参加者は、作品展示を見ながら出品者と交流、賞を決定する投票を行うことが出来ます。参加費は1,000円(受付でお支払ください)、学生は無料です。詳しくは下記のブログをごらん下さい。

「意見」ではなく「ファクト」で東北発信を 『東北ローカルジャーナリストキャンプ』がスタート

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は1月7日(土)と8日(日)、仙台市で『東北ローカルジャーナリストキャンプ』のキックオフ・ミーティングを開催しました。参加者は約3ヶ月かけて情報発信を学びながら、3月の原稿完成を目指します。

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初日は講師役のデスク4人が、取材の心構えや地域との向き合い方について講義。普段は記者、復興支援員、地域おこし隊や図書館司書など、さまざまな形で情報発信に携わる参加者らが真剣に聞き入りました。

「ジャーナリズムへの扉を開ける」をテーマに話した依光隆明さん(朝日新聞記者)は「ジャーナリズムは、お金をもらって書くマーケティングとは違う。本当のことを読み手に伝えるのが大切」と参加者に伝えました。

依光さんは「自分の考え(論)」と「事実」を分けて書くことの重要性を強調。①直接見聞きしたこと②事実だと裏付けられること③人が話したことは「ファクト」として記事を構築する材料になるとし、「ファクトがあいまいだと、その上にいくらりっぱな論を構築しても揺らいでしまう」と話しました。f:id:jcej:20170107115426j:plain

福島県いわき市出身の社会学者・開沼博デスク(立命館大学准教授)は「地域との向き合い方」をテーマに講義。東北からの地域発信の現状についても語りました。

開沼さんは、どのメディアも同じ対象(人)にばかりフィーチャーしがちで「東北の話題があまり読まれなくなっている」と説明。切り口も、行政・メディア批判などに偏っていると問題提起し、「Opinion(意見)とJustice(正義)を避け、Fact(事実)とFairness(公平性)を見るべきだ」と話しました。

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市役所の広報をしている参加者の女性は「普段の対象は市内の人たちで、どちらかというとマーケティングやPRのために記事を書いている。市としても外に発信したい想いがあるので、勉強していきたい」と話していました。

今回の取材テーマは東北の「人」。優れた作品はYahoo!ニュースに掲載される予定です。

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本プログラムは、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環です。Yahoo!ニュースの協力を得て行われています。地域に暮らしながら、外に情報を発信できる「ローカルジャーナリスト」の育成を通じて、東北の新しい魅力を全国に届け、ヒトやモノを動かす循環を作り出すことを目的としています。