#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の活動を紹介しています!

自分にしかない視点を大切に 與那覇デスクからジャーナリストキャンプ挑戦者へのメッセージ

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が4月29日から開催する「ジャーナリストキャンプ2016石巻」。全国から集まった記者が、第一線で活躍するデスク陣と共に熱い議論を交わし、学び合います。どんな挑戦者を求めているのか、震災から5年が経った宮城県石巻市で開催する意味をどう捉えているのか、デスクたちに伺いました。

インタビュー第四弾は沖縄タイムス社デジタル局デジタル部記者の與那覇里子さん。馴染みのない土地での取材は簡単ではありませんが、與那覇さんは「外から入ることは強みにもなり、新しい発見も多くなる」と考えているそうです。「自分にしかない視点」を大切にして、新たな気づきを提示できる記事を参加者と一緒に考えたい、と話してくださいました。


Q.今回、初めでデスクを務めていただきますが、率直な感想を聞かせてください。

参加者のブログを見ると「厳しい」「地獄」という言葉をよく見かけるのですが…正直、何が大変なのかまだイメージが湧きません(笑)でも、ほぼ初対面の人と短い期間でコミュニケーションをとり、記事を作っていくということは簡単ではない気はしています。仕事仲間だと「この人だったら、この内容が響く」などの予想を立てて議論ができますが、それが全く出来ないですから。しかも、慣れ親しんでいない土地での取材なので、なおさらだと思います。その一方で、その中で記事を作り上げた時の達成感は非常に大きいのではないでしょうか。


▽震災と無縁に思えるテーマも「震災」が影響しているのでは
Q.東日本大震災後に東北へ行かれましたか?

2014年、福島民報沖縄タイムスの合同企画「二つの故郷 国策のはざまで」で、福島で生活する沖縄出身者と沖縄で暮らす福島出身者を取材しました。その時、小学生の娘がいる男性が「放射能を浴びているから、一生福島から出ないと思う。娘には、福島というだけで結婚を断られたり、差別されて辛い思いをしたりするよりも、ずっと福島にいて欲しい」と話していたのが胸に刺さりました。たまたま震災のあった福島に生まれただけで…現地に行って話して初めて触れることのできた心の機微から、心の中でまだまだ震災が続いている現実を、目の当たりにしました。

Q.石巻ではどんなテーマがありそうでしょうか

沖縄は待機児童の割合が全国ワーストなんです。その背景の一つには沖縄戦後、米軍の統治下に置かれたために保育所の整備が立ち遅れたことが挙げられます。これと同じように、一見震災と全く関係ないテーマで取材を続けたとしても、何かしら「震災」が影響しているのではないかと感じます。

テーマは、どこに住んでいる人でも身近に感じられるものを選んだほうが興味深く読んでもらえるのではないでしょうか。例えば、沖縄はミネラルウォーターの消費量が全国でもトップクラスです。理由はいくつかあると思いますが、沖縄本島の一部は琉球石灰岩地層で形成されているため、カルシウム成分が多い硬度の高い水になります。もう一つは、暑い沖縄なので冷えた水を飲みたいと思って購入している可能性があります。その視点から「石巻の水はどうだろう?」という切り口も生まれます。このように、多くの人が興味を持つものがテーマになり得ると思います。


▽埋もれない記事を書くスキル

Q.Yahoo!ニュースの特徴をどう捉えていますか?

Yahoo!のプラットフォームから考えると、自分のテーマから派生する「関連記事」まで考えることもポイントになると思います。自分ひとりで取材しきれない情報を、次の情報へつなげたり、リンクを貼っていくことで全体像の輪郭が形成されていくこともあります。同じニュースでも、色々な視点から書かれている記事もあるので。

一方で、他のニュースに埋もれかねません。そのため、タイミングも大事ですね。例えば、もうすぐリオデジャネイロ五輪がありますが、それとリンクするような記事だと注目される確率が高くなると思います。今回のキャンプ記事の公開は5〜6月頃だと思うので、その時に世の中で何が起きているのか予想しながら書くというのも、1つのテクニックだと思います。ウェブでは、読み手に刺さる切り口と的確な言葉でつづらなければ、読まれないこともあります。熱量を読み手に適切に届けるための方法を探求していきたいと思います。


▽「私にしか書けない」という気持ちを大切に

Q.キャンプ参加者に向けて一言お願いします。

書く記事に正解、不正解はありません。他の場所から来たということは、ある意味アドバンテージになります。馴染みの薄い土地であれば、さらに気づきは多くなるでしょう。地元の人が当たり前と思っていることを「面白い」と思ったり、普通に道を歩いていて気づいたことを写真に撮ってみたり…そんな地元の人が再発見できるきっかけづくりをぜひして欲しい。当たり前の風景から、ハッと何かに気づいた時、記者の血が騒ぎます。「これは私にしかない視点。私にしか書けない」という想いを大切に、石巻の人に新しい視点を提示できるものを一緒に考えていきましょう!


<與那覇里子プロフィール>
那覇里子(よなは・さとこ)。沖縄タイムス社デジタル局デジタル部記者、ウェブマガジン「W」編集長。1982年11月、那覇市生まれ。千葉大学教育学部卒業。2007年、沖縄タイムス社入社。こども新聞「ワラビー」、社会部(環境、教育を担当)を経て2014年から現職。2014年、GIS沖縄研究室と共同制作した「具志頭村〜空白の沖縄戦」がGeoアクティビティフェスタで奨励賞、ジャーナリズムイノベーションアワードでデジタルジャーナリズム特別賞。2015年、同研究室、首都大学東京渡邉英徳研究室と共同制作した「沖縄戦デジタルアーカイブ」が文化庁メディア芸術祭入選など。 大学在学中から、ギャルやヤンキーなどの若者文化を研究し、著書に2008年「若者文化をどうみるか」(アドバンテージサーバー)編著など。


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