#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

被災地と読者のギャップを埋めよう 亀松デスクからジャーナリストキャンプ挑戦者へのメッセージ

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が4月29日から開催する「ジャーナリストキャンプ2016石巻」。全国から集まった記者が、第一線で活躍するデスク陣と共に熱い議論を交わし、学び合います。どんな挑戦者を求めているのか、震災から5年が経った宮城県石巻市で開催する意味をどう捉えているのか、デスクたちに聞きました。

インタビュー第三弾は、新聞社出身で、現在は弁護士ドットコムニュース編集長・亀松太郎さん。デスクを務めるのはジャーナリストキャンプ2013福島から4回連続となります。参加者一人ひとりが、それぞれ違う問題意識と違う課題を持ってキャンプに臨んでいると感じているそうです。「10年ほどネットニュースの編集をしているので、その経験を活かしたアドバイスをしたい」と話してくださいました。


Q.今年で4年目のデスクになりますが、過去のキャンプを振り返ってみるといかがでしょうか。
2013年に福島県いわき市で福島キャンプを行いましたが、いわきを見つめ直せるという意味で、大きかったと思います。同じ被災地でもいわき市内で沿岸部と内陸部とで差がありました。この時、初めてデスクとして参加し、チームで1つの記事を仕上げたのですが、それがとても難しかったと感じました。翌年の高知キャンプでは、いわきの時の経験を踏まえてデスクとして指導することを工夫し、記事も個々の記者ごとにテーマを立てて取材する形にしました。基本的に、参加する人はそれぞれの課題があり、問題意識も異なります。それを汲み取ってキャンプを通して一緒に改善していければと思っています。


▽現場には「伝えられていない」想いがある

Q.「石巻」の記事を書く際に心に留めておくことは何でしょうか?

石巻をめぐるさまざまなストーリーは膨大で、本当は書き尽くされてないんですが、一般的には「たいていのことはすでに報道されてしまった」と受け止められていると思います。それをいかに打ち破るのかがポイントです。

僕は東日本大震災が起きたとき、ニコニコ動画が運営する「ニコニコニュース」の編集長をしていたのですが、震災から1年後、「被災地最前線からの報告〜記者たちが探し出した『真実』〜」という討論番組を朝日新聞と共同で企画し、宮城県朝日新聞仙台総局から生放送しました。僕が司会を担当して、石巻宮古、大槌、南相馬、南三陸の支局長や駐在記者がそれぞれの想いを語ったのですが、その当時の石巻支局長が言っていたことが印象に残っています。

石巻は人口が多いため、犠牲者も多い。それなのに、(当時の)石巻支局には僕一人しか記者がいない。書いても書いても書き尽くせない」

震災から1年経って、東京では「風化」という言葉も聞かれるようになっていましたが、現場には「まだ書けてない」「理解されてない」「伝えられてない」という気持ちがあると言っていました。今年、震災から5年が経ちましたが、現場では今もそのような想いを持った人がいるかもしれません。しかし、その一方で情報を受け取る人たちからすると、「石巻」についての記事というだけですべてが同じものに思えてしまうかもしれません。そのギャップをいかに打破できるかが問われるキャンプだと思います。

▽新聞記者は媒体の意識を。ウェブメディア人は1つのテーマを掘り下げて。

Q.ジャーナリストキャンプは今年で5年目になりますが、その意義をどうお考えでしょうか。

参加する人が多彩なのが面白い点だと思います。新聞社やテレビなど従来型メディアの人もいれば、オンラインメディア系の人やフリーランスライターもいて、それぞれ参加する目的が違うと思います。一般的に、新聞社の記者は、インターネットやウェブメディアが台頭していく中で、どう新しいメディアに対応するのかが求められると思います。

ジャーナリストキャンプで書いた記事はネット媒体で公表されます。福島いわきでのキャンプの時は、見出しなど「見せ方」の大切さを強調しました。新聞記者の人は特に、発表媒体の特性の違いを意識してもらいたいです。その一方で、ウェブメディア系の人は記者会見に行ったり、インタビュー記事を書いていたりするかもしれませんが、現地でじっくり取材することは少ないのではないでしょうか。一つのテーマを継続的に取材したり、ある地域を網羅的に取材することによって得られる経験や知識もあります。ネットだと効率性重視になってしまうことがあるかもしれませんが、このキャンプでは、普段よりも時間をかけた取材をたくさんして、その中から書けるテーマを見つけるという手法もあります。新聞やテレビの記者とネットメディアの記者の両方が参加して、刺激しあえるのがいいなと思っています。


▽「変わりたいなら来い!」チャレンジする人大歓迎

Q.どういう人に参加して欲しいと思いますか?

色々な意味で「自分を変えたい」と思う人に来て欲しいですね。メディア業界で働いている人は、普段は媒体としての要請や上からの指示で、どんな内容をどのように書くかを決めていることが多いのではないでしょうか。ジャーナリストキャンプではデスクはいますが、最終的な責任者は自分自身。デスクが出したいものは何かを考えるのではなく、自分が本当に伝えたいことは何かを追求する。その主体性を大事にしてください。

「変わりたいなら来い!」と言いたいですね。来てみて損はないですから。チャレンジしたい人、大歓迎です。

<亀松太郎プロフィール>
ジャーナリスト、弁護士ドットコムニュース編集長。1970年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒。朝日新聞記者として3年勤務した後、J-CASTニュースなどを経て、2010年に株式会社ドワンゴ入社。ニコニコニュース編集長として、ニュースサイトの運営と報道・言論番組の制作を統括した。2013年から法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」でニュース編集に携わる。2014年から早稲田大学大学院ジャーナリズムコースの非常勤講師を務める。

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http://jcej.info/jc2016/