#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「明らかになっていないこと」を引き出せるか 依光デスクからジャーナリストキャンプ挑戦者へのメッセージ

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が4月29日から開催する「ジャーナリストキャンプ2016石巻」。全国から集まった記者が、第一線で活躍するデスク陣と共に熱い議論を交わし、学び合います。どんな挑戦者を求めているのか、震災から5年が経った宮城県石巻市で開催する意味をどう捉えているのか、デスクたちに伺いました。

インタビュー第二弾は、4年連続でデスクを担当する朝日新聞社記者・依光隆明さん。2012年に新聞協会賞を受賞した「プロメテウスの罠」取材班の初代キャップを務め、被災地での取材を重ねてきました。マニュアルのないキャンプでは、事前に入念なリサーチをして切り口を考えることが重要、と依光さん。その上で、「これまで明らかになっていないことを引き出して欲しい」と話しています。



▽「何が書かれていないか」を知る

Q.石巻でキャンプを行うときに考えておくべきことはな何でしょうか。

石巻では約3500人が亡くなっています。これほどの被害を受けた場所は、世界でも稀だと言っていいでしょう。とはいえ世界では毎日色々なことが起きます。震災の直接の被害者でない人は、時間とともに震災から意識が離れていくのが自然だと思います。対照的に、実際に身内が亡くなった人にとっては震災は過去にはならない。こちらが過去だと思って入っても、その人にとっては違う。だから、言葉の使い方一つ一つがとても重要です。

Q.石巻に関する報道は多くなされてきましたが、「書き尽くされた」と思われますか?

石巻に関する記事はたくさん書かれてきましたが、書き尽くされるということはありません。大事なのは何が書かれていて、何が書かれていないかを知ることです。

今年は震災5年目で色々なメディアが被災地に入っています。3月11日にも多くの報道がありましたが、それと同じものを5月に書いてもピンボケするだけです。必然的に、事前のリサーチと、柔軟な発想がキーになるでしょう。どのような切り口にするのか、自分なりにざっくりと考えておく必要があります。


▽「誰にも話していないこと」を引き出して

Q.記事執筆についてアドバイスはありますか?

石巻はどういう場所で、どうして3500人もの方々が亡くなったのか、ある程度知っておくべきだと思います。例えば、たくさんの子どもが亡くなった大川小学校でさえ書き尽くされてはいません。学校にいた子どもを死なせたのは大川小だけです。なぜそんなことになったのか。自分なりの問題意識を持って現場に行くと、何かが見えるかもしれません。

切り口や仮説を持って現場に行けば、その仮説が崩れて真実らしきものが見えてきたりします。それが大事です。自分の予測、仮説が正しいと決めつけてしまいがちな人もいますが、それはダメです。自分が求める結論に沿って事実を集めるようになってしまうと最悪です。答えは現場にあるし、極言すると現場を見なければ答えは出ません。鍵は「こんなが話あったのか」という事実を掘り出すことです。「まだ誰にも話していないこと」を引き出すことはそう難しくはありません。鍵は「人」だと思います。たくさんの人に会うように心がけたらいいと思います。


Q.キャンプの参加を考えている方へ一言お願いします。

キャンプはその場に行くこと、足を踏み入れることに意味があります。マニュアルはありません。誰かが辿ったことを辿るのではなく、自分なりに追求したいことを追求して書く。事前リサ―チをして、自分なりの取材をしてみてください。

依光隆明プロフィール>
よりみつ・たかあき 朝日新聞be編集部員。1957年生まれ、高知市出身。高知新聞で社会部長などを経て、2008年12月朝日新聞に入社。特別報道部長、編集委員など。12年新聞協会賞を受賞した「プロメテウスの罠」取材班の元キャップ。同賞受賞は、高知新聞時代に県庁の不正融資を暴いた「県闇融資報道」に続いて2回目。

【ご応募はこちらから】
http://jcej.info/jc2016/