3月3日に東海大学で行った「ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム2012」の参加者報告。第三弾は、コミュニケーションデザインの石村源生さん(北海道大学CoSTEP特任准教授)による「参加者の相互支援ネットワーク構築のためのワークショップデザイン」のセッション。報告は八柄順子さんです。
私はフリーランスのアナウンサーと、ファイナンシャルプランナーという、2つの仕事をしています。マネーセミナーやアナウンス勉強会などでお話しする機会が多いのですが、伝えたい内容がきちんと伝わったのか、伝えた情報が聞き手の役に立ったのか、いつも気になっていました。そこで、「参加者の相互支援ネットワーク構築のためのワークショップデザイン」に参加しました。
このワークショップ自体が、「ワークショップのお手本」というのでしょうか。ワークショップによって「自分の抱える問題が明確になる」「さまざまな視点からの解決法(協力者)が見つけられる」「ワークショップ終了後も持続可能なネットワークが作れる」ということを、実際に体験することができました。問題を明確にし、他人と共有する
まずは、自分の課題・問題を明確にすることから、ワークが始まりました。現実の課題・問題を扱う理由は、そのほうが実際に解決に向けて有益な議論をすることができるからです。問題点は、3つの視点で書き出します。
- 職能軸=その職業固有の問題
- 組織軸=所属組織における自部門や自身の位置づけの問題
- 自分軸=自分のキャリアデザインの問題
の3つです。
7分程度で、簡潔に書き出します。私はフリーランスですので、組織軸については、放送業界の中での自分の位置づけという視点で考えました。
次に4人1組になり、1人4分程度で各々の問題点を発表しあいました。理解できない部分は質疑応答して、問題点を共有できるようにします。続いて10分程をかけて、「お互いの問題の解決に向けて、自分がどのような協力ができるか」を考え、協力の申し出合いを行いました。
例えば「報告書や企画書を書くのが遅い」という問題を抱えている人に対しては、「要旨を的確にまとめるコツを伝授しますよ」、「英語が出来る仕事のパートナーを探している」という課題を持っている人に対しては、「知り合いを紹介できそうです」といった、自分ができる協力を伝え合います。この日は時間の都合でできませんでしたが、通常は、グループワーク後に別の班とも情報の共有、協力の申し出合いを行うとのことです。
グループワークは、なるべく初対面同士のグループで行うのがよいようです。職業、業界等が異なる同士のほうが、どう伝えたら理解してもらえるかを深く考えるため、問題点をしっかり整理しようという意識が強く働くように感じました。また、異なる立場の人の意見をもらうことで、新しい視点に気付いたり、想像していなかった解決へのアプローチを見出したり等、新鮮な体験をすることができました。
ワークショップでの大切なこと
ワークショップを有意義なものにするために大切な心構えとして、石村さんは4項目を挙げられました。
- 自分の弱い部分を出す「勇気」
- 相手の弱い部分を受け入れる「寛容さ」
- 普段より一手間かける「根気」
- どんな出来事も自分の学びに結び付ける「柔軟さ」
この4項目には、実に目を開かされる思いをしました。
たった数時間(この日はわずか45分)のワークショップの中で、自分の弱さをさらけだすというのは、実に勇気がいることです。しかし、自分の弱さを認めることは、自分が何が苦手で、どういった協力を必要としているのかをはっきりさせることでもあり、他者からの的確なアドバイスを得るために必要な行程であると感じました。また、私が過去に参加したワークショップでは、年長者やベテラン、理屈派の人による、「そんなのは単なる愚痴だ」「あなたの考えが甘すぎる」などの厳しい意見の前に、言われた側の人が押し黙ってしまうということがあらいました。ワークショップを意味のある学びの場にするためには、他人の意見を受け入れる寛容さが必要であることを、参加者にしっかりと認識してもらうことは、たいへん大切なことだと思いました。
その日限りで終わらせない
お互いの協力のオファーを実行するために、facebookなどを活用して、交流と情報交換、課題達成の途中経過や結果の報告を行います。お互いに協力しあえるネットワークを作って、協力を実践していくこと。これこそがワークショップの目的ということなのでしょう。ワークショップを有意義なものにするために必要なポイントを、学ぶことができました。今後の仕事においては、自分に不足している点、特に「寛容さ」を心がけることと、参加者に協力のネットワーク作りを働きかけることを、実践しようと思っています。
(報告:八柄順子)
【セッション関連情報】
【参加者報告】
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