#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の活動を紹介しています!

日本国内のフェイクニュースを調査するプロジェクト「フェイクニュース研究会」を立ち上げました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は、新聞記者や研究者、エンジニアらと連携して「フェイクニュース研究会」を立ち上げ、6月17日に第1回会合を行いました。国内ではどのようなフェイクニュースが存在し、どういった経路で伝播しているのかなど、実践的にリサーチを進めながら対策を考えます。

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フェイクニュースが大統領選に大きく影響したとされるアメリカや、今年選挙が相次ぐヨーロッパでは、メディア機関やプラットフォームが連携してすでに対策が進んでいます。欧州のリサーチ機関「Public Data Lab」や米ファクトチェック団体「First Draft News」の協力も得ながら、海外とは異なることも予想される日本での状況に焦点を当てていきます。

第1回会合では、Public Data LabがFirst Draft Newsの支援を受けて作成したフェイクニュース研究のガイド「A Field Guide to Fake News」をメンバー全員で読み解きながら、フェイクニュースを取り巻くエコシステム解明にはどのようなデジタル手法が有効かを議論しました。

今後は定期的にミーティングを開催しながら、オンラインリサーチのほか、現場取材や海外での現状視察など、多角的な取り組みを進めていきます。また、許可を受け同ガイドの日本語版も作成する予定です(英語ガイドの完成版は9月頃にリリース予定)。

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JCEJは、フェイクニュース時代の取材スキル向上に資する取り組みの一貫として、ソーシャルメディアを使った取材の米ハンドブック「A Journalist's Guide to Working With Social Sources」の日本語版「ソーシャルメディアを使った取材の手引き」を作成。5月に無料公開しています。詳しくは以下のブログ記事をご覧ください。

jcej.hatenablog.com

フェイクニュース時代の取材スキルとは? 「A Journalist's Guide To Working With Social Sources」邦訳記念イベント開催

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は5月13日(土)、米ファクトチェック団体「First Draft News」が公開している、ソーシャルメディア取材のハンドブック「A Journalist’s Guide to Working With Social Sources(ソーシャルメディアを使った取材の手引き)」の日本語版公開を記念したトークイベントを開催しました。ハンドブックを紹介しながら、フェイクニュース時代の取材スキルについて考えました。会場は株式会社はてなの協力を得ました。

ハンドブック日本語版「ソーシャルメディアを使った取材の手引き」をダウンロードする

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 イベントではまず、ゲストスピーカーの平和博さん(ジャーナリスト、ブログ新聞学的)が海外のフェイクニュース動向について講演しました。

平さんは「フェイクニュースは構造が複雑で、(関係する)プレイヤーがたくさんいる」と説明。フェイクニュースが大統領選の結果に影響を与えたとされるアメリカでは、政治的動機や広告収入目当てで偽情報を流すサイトが存在し、ロシア政府や、デマの拡散を日常業務として請け負う「トロール工場」と呼ばれる業者なども関わっていると話しました。

f:id:jcej:20170513132121j:plainまた、今回邦訳したハンドブックを発行しているFirst Draft Newsがフランスメディアと協力して進めている、フェイクニュースに対抗するプロジェクト「クロスチェック」についても解説。フランス大統領選に向けて行われたメディア側の取り組みを紹介しました。

 後半は、ハンドブック邦訳に携わったメンバー9名のうち、NHKソーシャルリスニングチームの足立義則氏、岡田真理紗氏、藤目琴実氏、徳島新聞編集委員の木下真寿美氏、JCEJ運営委員の耳塚佳代が、それぞれの担当章を紹介しました。

世界的にフェイクニュースが広がる中、マスメディアがソーシャルメディア上で取材を行う際にも注意が必要です。メンバーは、日本でも問題になっているインターネット上でのメディアスクラムや、偽の情報を主要メディアが引用してしまった事例を挙げながら、ハンドブックに書かれている注意点について解説。

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来場者も交えてのディスカッションでは、インターネット上で投稿されたコンテンツを報道で使用する場合のリスクについても議論が及び、会場からは「偽の情報源を見分ける具体的な方法はあるのか」など様々な質問がありました。

「(情報源が信頼できるのか)メディアがきちんと確認し、許可を取るなど丁寧な作業をしなければ、今後大きな問題になりかねない」や「直接現場に出向く従来の取材手法でカバーできるのに、安易に(投稿コンテンツを)くださいと言い、炎上につながるケースも散見される。簡単に行けない場所で撮影されたものや、速報時などに限るべきではないか」という意見もありました。

 

JCEJでは引き続きフェイクニュース対策に関する取り組みを進めていきます。

ハンドブックの詳細については、こちらの記事もお読みください。

jcej.hatenablog.com

 

 

「A Journalist’s Guide to Working With Social Sources」を邦訳、無料公開しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は、米ファクトチェック団体「First Draft News」が公開している、ソーシャルメディアを使った取材のハンドブック「A Journalist’s Guide to Working With Social Sources」の日本語版「ソーシャルメディアを使った取材の手引き*1を作成し、無料公開しました。

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 英語版ハンドブックを作成したFirst Draft Newsは、グーグルニュースラボの支援を受けて2015年に設立した米非営利団体。デジタル時代の取材スキルや報道の質向上を目指しており、世界各国のメディアや人権組織がネットワークに属しています。ネット上の虚偽情報を検証するプロジェクトに協力しているほか、ホームページでもソーシャル取材に関する様々なコンテンツを公開しています。

 

<ハンドブック著者クレア・ウォードル氏のコメント>

ジャーナリストたちは、ソーシャルメディア上で見つけた画像やビデオをどのように報道で扱えばよいか、日々疑問に直面しています。似たような質問がたくさん寄せられたため、ガイドブックを作成しました。このガイドブックでは10のよくある質問に答えており、とてもポジティブな感想が届いています。日本語版のリリースを非常に嬉しく思います。

<ハンドブックについて>

無料公開されているハンドブックは全3種類あり、今回JCEJが許可を得て邦訳した「A Journalist’s Guide to Working With Social Sources(ソーシャルメディアを使った取材の手引き)」は全10章。ソーシャル取材に関するアドバイスや、画像・動画などのユーザー作成コンテンツを報道で使用する際の注意点などが紹介されています。アメリカで実際に起きた事例を基に、実践的なポイントが盛り込まれています。

第1章 ソーシャルメディアで情報提供者に連絡する際の注意点
第2章 事件や事故の目撃者にどう呼びかけるか
第3章 目撃者が投稿した写真や動画を使うのに、許可は必要か
第4章 使用許可を得る方法
第5章 もし投稿者が写真や動画を削除したら
第6章 投稿されたコンテンツをサイトに埋め込む場合の注意点
第7章 使用料は支払うべきか
第8章 写っている人への配慮は必要か
第9章 クレジットを付けるべきか
第10章 衝撃の強い写真や動画から自分自身を守るには

 

【終了しました】これを記念して5月13日(土)13時から、東京都港区の株式会社はてなトークイベントを開催します。

世界的にフェイクニュースが広がる中、マスメディアの取材にも厳しい目線が注がれています。特にソーシャルメディアを対象にした取材では、不確実な情報を報じたり、目撃者とみられるアカウントに取材依頼が殺到する、など問題となっています。

イベントでは、ボランティアでハンドブックの邦訳作業を行った担当者が、それぞれの担当した章を説明。ゲストスピーカーにジャーナリストの平和博さんをお招きし、フェイクニュース時代の取材についても議論します。仕事で実際にソーシャルメディアを使っている記者やライターの方、欧米でのフェイクニュースに関する動向に興味があるという方など、是非ご参加下さい!

イベント概要

◆日時:5月13日(土)13時~15時(12時45分開場)

◆会場:株式会社はてな 東京オフィスセミナースペース(〒107-0062 東京都港区南青山6-5-55 青山サンライトビル3F)

◆参加費:1,500円

◆定員:30名

◆ゲストスピーカー:平和博氏(ジャーナリスト、ブログ新聞紙学的

◆邦訳プロジェクトチーム:穐岡英治氏(NHK)、足立義則氏(NHK)、岡田真理紗氏(NHK)、木下真寿美氏(徳島新聞)、藤目琴美氏(NHK)、耳塚佳代(JCEJ)、森廣陽子氏(ライター・翻訳家)

◆進行:藤代裕之(JCEJ)

◆内容:

平さんによる講演「フェイクニュースに関する世界の動向」

邦訳プロジェクトチームから各章の説明・ハンドブックへの質疑

フェイクニュース時代の取材手法に関するディスカッション

*1:注:ハンドブックはAdobe Acrobat Readerでの閲覧を推奨します。コンテンツが適切に表示されなかったり、リンクが切れたり、することがあります。

地域の発信者が描いた、新しい東北の魅力とは 「ローカル発・読まれるニュースのつくり方」を開催しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は震災から6年となる3月11日(土)、東京紀尾井町のヤフーで、地域からの発信を考えるイベント「ローカル発・読まれるニュースのつくり方」を開催しました。JCEJは昨年から復興庁と「東北ローカルジャーナリスト育成事業」に取り組み、「東北の人」をテーマにした記事がヤフーニュースで計11本公開されました。事業の報告会を兼ね、東北から参加した執筆者らとともにそれぞれの記事を振り返りました。

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セッションでは、指導役のデスクを務めた依光隆明さん(朝日新聞記者)と苅田伸宏さん(ヤフーニュース編集者)が、公開された記事について解説。おすすめ記事や、取材執筆にあたっての工夫や苦労について振り返りました。全作品を、デスクのコメントとともに紹介します。

 

1. 死者の結婚式「あの世」の幸せ願う山形のムカサリ絵馬師

死者の婚礼を絵馬にして弔う、東北山形に残る風習「ムカサリ」。ムカサリ絵馬師が、筆を執り続ける思いを描いた記事。ヤフートピックスに掲載されました。依光デスクのおすすめ記事。

 

2. 花嫁を全力で笑わせる「道化」とは  岩手の「幻」の風習を訪ねた

「長い記事だと2ページ目以降は読むのをやめてしまうものもあるが、うまい書き方で、ストーリーになっている。次どうなんだろう、と見たくなる」(苅田デスク)


3. 廃墟見える岩手のスキー場 バックカントリーで再興 課題は安全対策と自然保護

バックカントリーについての記事は読まれた。写真もとても良く、スキーが好きな人たちに刺さった記事。だいぶシェアされた」(苅田デスク)


4. 「どう死ぬか」ホームホスピス、笑って過ごすもうひとつの家

「センシティブな内容なので、相手との信頼関係がしっかりないと書けない。写真もいいし、お互い看取ってるという環境があることにも驚いた」(依光デスク)


5. 沖縄からふるさと福島へ 元自衛官たちの支援

「沖縄に暮らす、福島出身の元自衛官の記事。人を描くときは、どれだけファクトやエピソードを引き出せるかにかかっているが、具体的な話をたくさん聞き、文章として紡いでいる」(苅田デスク)


6. 「78歳の命」あと何年生きるのか...岩手の過疎地で暮らす被災者の人生

「これは楽天イーグルスの銀次選手に関係する記事になるはずだったんですね…しかしまったく消えてしまった。一番驚いたのはトイレの写真ですね。何年生きられるか、という。これはすごい」(苅田デスク)

 

7. 気仙沼市南町ヴァンガードでコーヒーを 

「雰囲気が伝わる記事。書き手には、相手の中にあるものを取り出す役目もある。もう少し人にフォーカスしてみても、面白い話が出てきたかもしれない」(依光デスク)

 

8. マタギに感銘 秋田にUターン、マタギ見習いになった33歳の試行錯誤

「震災をきっかけにUターンし、マタギツアーを企画しようと奮闘した人の話。本人や周辺から、取材で濃厚な話を聞けている。泣く泣く削るエピソードもあった」(苅田デスク)


9. 地面出し競争 豪雪の山形・肘折で逆境を楽しむ人々

「担当した記事。読んで泣いたという連絡を頂いて嬉しかった。雪を掘って地面を出すという、バカバカしいことに一生懸命な人たちの物語」(苅田デスク)


10. ふくしまオーガニックコットンプロジェクト:口に入れる農作物をつくることができる福島で、「口に入れない農作物」をつくる理由

プロジェクトに関わる当事者が執筆した記事だが「自分がやっているという関係性が、記事の中で明示されていたのはすごく良かった」(苅田デスク)

 

11. 消えゆくものの魅力。天然秋田杉で木桶を作る

「おじいちゃんがニコニコしている写真、職人の顔つきをしている写真...落とすのが忍びない写真もあった。文章も写真も、作品として完結していて、良いものに仕上がっている」(依光デスク)


 セッション終了後は、執筆者と来場者が自由に交流し、記事の内容や東北の魅力について語り合いました。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。

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本プログラムは、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環で、Yahoo!ニュースの協力を得て行われています。地域に暮らしながら、外に情報を発信できる「ローカルジャーナリスト」の育成を通じて、東北の新しい魅力を全国に届け、ヒトやモノを動かす循環を作り出すことを目的としています。

「ローカル発・読まれるニュースのつくり方」3月11日開催します!

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は3月11日(土)午後、東京・紀尾井町のヤフーで、地域からの発信を考えるイベント「ローカル発・読まれるニュースのつくり方」を開催します。

JCEJは、地域のニュースを発信する「ローカルジャーナリスト」を育成する「東北ローカルジャーナリスト育成事業」に復興庁と取り組んでいます。主に東北から参加した人たちが記事を執筆。その記事は3月上旬、Yahoo! ニュースに掲載される予定です。

イベントでは、同事業の指導役を務めたデスクとともに、読まれる地域のニュースをつくるために大切にすることや、リスクマネジメントなどを議論します。また、記事の執筆者と交流する時間も設け、直接、意見交換できる場にしたいと考えています。

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「新しい東北の魅力」について話そう

この日で東日本大震災から6年を迎えます。テレビや新聞による報道は年々減り、東北の情報を知ることも少なくなっています。今回、執筆者が記事のテーマにしたのは、人を通じた「新しい東北の魅力」。新しい東北の魅力はどんなものなのか、今東北で活動している人の思いや物語とは、また、どんな新しい表現や届け方ができるのかなど、ぜひ一緒に話してみませんか。

どなたでも参加できますので、お気軽にお越しください。お待ちしています!

必ず事前に申し込みが必要となりますので、ご注意ください。申し込みはこちらのフォームからお願いします。締め切りは3月6日。

 「ローカル発・読まれるニュースのつくり方」

 

◆日時

3月11日(土)13時〜16時30分

◆会場

東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス内 株式会社ヤフーのコワーキングスペース「LODGE」(当日は東京ガーデンテラス2階のエントランスから18階のイベント専用受付にお越しください)

◆参加費

無料

◆申し込み

こちらのフォームからお願いします(事前に申し込みが必要です。締め切り3月6日)

 

<当日のプログラム>

 

13時 JCEJより東北ローカルジャーナリスト育成事業の概要説明

 

13時10分〜14時 セッション1:読まれる地域ニュースのつくり方

依光隆明デスク(朝日新聞記者)× 苅田伸宏デスク(Yahoo!ニュース編集者)
司会:田中輝美(JCEJ運営委員)

掲載された全記事を紹介しながら、読まれるためにどんな工夫や苦労があったのか、2人のデスクと振り返ります。

 

14時〜15時30分 「新しい東北の魅力」を執筆者と話そう

新しい東北の魅力をテーマにした記事の執筆者と、自由に交流できる時間です。

 

15時30分〜16時30分 セッション2:地域の課題や葛藤をどう描くのか

那覇里子デスク(沖縄タイムス記者) × 関根和弘デスク(朝日新聞記者)

司会:藤代裕之(JCEJ代表運営委員)

魅力を発信する上で、地域課題への問題意識は欠かせません。どう描いていけばよいのか、2人のデスクと議論します。

 

 

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東北から全国に発信する意味のある記事を「ローカルジャーナリスト育成事業」の執筆合宿を開催しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が復興庁と取り組む「東北ローカルジャーナリスト育成事業」の執筆合宿が、2月10日から12日まで宮城県石巻市の「ヤフー石巻復興ベース」で開催されました。1月のキックオフ・ミーティング以降、東北各地で取材を進めていた参加者が原稿を持ち寄り、より良い作品にするためのブラッシュアップを2泊3日で行いました。

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1日目は、参加者それぞれが原稿の内容や狙いを説明。東北に昔から伝わる風習や農業などのテーマが発表されました。地域の外に伝わる記事にするため、指導役を務めるデスク陣からは厳しい意見も出されました。

関根和弘デスク(朝日新聞記者)は「テーマは面白いが、東北から発信する意味はどこにあるのか」と指摘。與那覇里子デスク(沖縄タイムス記者)は「誰に向かって書くかを意識してほしい。地域の課題を地域の中に伝えるのではない」と話しました。

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 2日目は、ヤフーニュース編集者の苅田伸宏デスクから、ヤフーニュースの概要説明が行われました。

1日4000本の配信記事から、すべて編集者による人力の作業で価値あるものを選んでいるヤフ一。1日あたり80-100本の記事がトピックスに掲載されます。苅田さんは「読まれる記事だけでなく、社会性、公共性の高い記事をいかに読んでもらうかが重要と考えている」と話しました。

苅田さんは、見出しのつけ方についても説明。ヤフートピックスでは「パッと見て分かるように13文字で表現している」「読者に誤解を与えるような、タイトルと内容の落差が大きいものはNG」と伝えました。

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レクチャー後は、それぞれの記事に見出しを付けることで、読者に何を一番伝えたいのかを考えるワークショップを行いました。デスク陣からは「地域名にニュースバリューがあるのか考えたほうがいい」「この切り口で行くんだ、ということを表してほしい」などの意見が出ていました。

記事は3月上旬からヤフーニュースに掲載される予定です。

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本プログラムは、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環で、Yahoo!ニュースの協力を得て行われています。地域に暮らしながら、外に情報を発信できる「ローカルジャーナリスト」の育成を通じて、東北の新しい魅力を全国に届け、ヒトやモノを動かす循環を作り出すことを目的としています。

声なき声に寄り添うための「聞く力」とは 「東北ローカルジャーナリスト育成事業」レポート

相手の想いを受け止めて発信するための第一ステップは「耳を傾けること」。鎌倉幸子さん(アカデミック・リソース・ガイド・ストラテジスト)は、取材で本音を「聞く」力を養うためには、相手の心を開くための心構えや、日々のトレーニングが大切だと話します。「東北ローカルジャーナリスト育成事業」(取材で話を聞き出す力)での鎌倉さんの講義詳細をお届けします。

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声なき声に光を当てる

ジャーナリストの仕事は、声なき声を伝えることだと思っています。社会で起きていることを発信したいと考えたとき、いかに「声なき声」に光を当てていくかがとても大切です。

社会の中で、声を発したい人はたくさんいると思います。光が当たっている方もいれば、社会問題の当事者になって苦しんでいるのに、どうやって声を発すればいいの分からない、「発していいのか」すら分からない人がたくさんいると思います。

そういう「声なき声」を拾い、目を向けられるような姿勢で臨むのが、まさに「読者」と「メディア」の間にいるジャーナリストやライターの役目ではないでしょうか。

例えば、東日本大震災で多くの方が亡くなりましたが、自分の悲しみを人に言うことができない方々は多くいらっしゃると思います。私も震災後に岩手県で勤務していましたが、話を聞いていいのかな、と躊躇してしまうこともあると思います。でも逆に聞くことによって、相手が自分の気持ちを適切に表現できたとき、心の中のもやもやが晴れる、という場合もあると思います。

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「聞く」と「聞き流す」は違う

その人が「話したい」と思っていることを受け止め、発信していくために、まず一番最初のステップは「耳を傾けること」です。

齋藤孝さん(明治大学文学部教授)という方が『話し上手聞き上手』という著書の中で 、「聞いた」の基準は、話を要約してポイントを落とさずにもう一度繰り返せるか、つまり「再生できるか」が聞いたことの証明になる、という趣旨のことを書いています。

「あーそうですか」と聞いておきながら、結局自分の頭に何も残っていなければ意味がありません。「聞く」と「聞き流す」は違うんですね。

話を聞くとき、前提条件として「私以外はみんな他人である」という認識が大切です。取材をお願いする人も、記事を読んでくれる人も、基本的には赤の他人。自分が「分かったぞ」と思っても、理解しきれていないことは多いので、適切な質問をしながら、確認するという作業が必要です。

取材する前にできること

取材というと、とにかくインタビューして人の話を聞くことだと思われがちですが、その前にできることがあります。

1: 情報収集

事前に情報を集めることもとても大切です。

まずは資料を探し、調べるのが1つの方法です。もちろん自分で行けない場合もありますが、今は最低でもインターネットで調べられますし、図書館でも多くの資料が手に入ります。

東日本大震災で被害を受けた場所に記者が来て、「被害はどれくらいひどいんですか?」から始まったら、取材を受ける側は「この人は何をしに来たんだろう、心を寄せてくれてないな」と感じると思います。

また、現場に足を運び目で確かめると、空気感などを事前に知ることができます。私は、インタビューが始まる1〜2時間前にはそこへ行って、相手が暮らす街を歩いてみたり、公園のベンチに座ってみたりと、空気を肌で感じることを大切にしています。

2. 相手の関係先を洗い出す

取材で取り上げたい人がいたら、その人が何をしているかだけでなく、その人を取り巻く関係性の全体像を捉えることがとても大切です。

例えば、取材したいAさんには、対立しているBさんがいるかもしれません。それには何か理由があるはずです。Bさんを無視するのではなく、Bさんが何を考えているかを考慮した上で、Aさんと話をするのが大切です。

まずは、自分が取材したいトピックを真ん中に置き、関係する人たちを洗い出してみてください。そうすると、見えなかったつながりや問題点が見えてきます。

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質問の作り方:瞬時に5つ考えるトレーニング

みなさんもインタビューの際、質問は箇条書きで準備していると思います。ただ、事前に考えた質問にパッと答えてもらえて「良かったな」と思いつつ、「本当にこの人は言いたいことを言えたのかな」と思うことがありませんか?

質問を作る側は、案外「自分本意」の質問しか考えられないんですね。相手の内面を引き出すような質問ができれば、結果も違ってくるかも知れません。

取材中にアドリブで質問を作るのは難しいですが、私は「聞いたことに対して、10秒で5つの質問を作る」というエクササイズを実践しています。これは取材だけでなく、日常のコミュニケーションにも役立ちます。

例えば「昨日、お母さんと買い物に行ったんだ」という何気ない一言に対して、「どこのショッピングセンターに行ったの?」「何を買ったの?」「気に入ったものはあった?」「いくら使った?」「車で行ったの?」と、質問は限りなく作れます。実際に聞く、聞かないは別として、この方法で練習して習慣化すれば、次の一手が浮かんで、会話が途切れません。

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 分かったふりをしない

準備して臨んでも、相手が話したトピックについて知らない、ということも取材ではあり得ます。例えば、取材相手が「私の子供は●●という病気です」という話をしたとします。聞いたことがない病名だったら、どうしますか?

病気のことは聞きづらいので、メモしておいて後で調べるのが良いでしょうか。ただ、正しくメモを取れていなくて、あとで調べてもでてこない、となってしまうかもしれません。「そうなんですね、大変ですね」と言っても「あなた本当に分かっているんですか?」という雰囲気にもなってしまいます。

こういう場合は「不勉強で申し訳ないのですが、教えてください」と聞いてみるのが良いと思います。少なくとも「●●という病名ですか?」と固有名詞を確認した方が良いでしょう。

聞きにくいことでも「私は向き合います」という姿勢で、真摯に掘り下げて聞いていく方が、「この人は耳を傾けてくれる、味方になってくれている」と共感されることが多いです。

分からない単語が出るとギクッとして、止まってしまいますが、逆に学ばせてもらいながら、相手と対話できれば良いのではないかと思います。

 相手の呼吸に合わせる

インタビューをする際、どんなに丁寧な言葉遣いをしていたとしても、貧乏ゆすりをしながらふんぞり返って聞いていたら、心を開いてもらえません。取材する側の「姿勢」もとても大切です。

声の質やトーンも重要。相手の呼吸に合わせて呼吸をしてみてください。そうすると、良い間で話を切り出せたりするので、私は意識しています。声のトーンも、話の内容や相手の声に自分から合わせていくことが大切です。

よく「スマイルが大切」と言いますが、話の内容によって、スマイルしてはいけない時もあります。表情も、話している方を見ながら意識してみましょう。

自分が相手に同調しつつ、「ちゃんと話を聞きに来ました」という姿勢を見せることが一番です。人間は、視覚から入る情報が大半を占めます。どれだけ洗練された質問をしても、ぶっきらぼうだったり横柄な態度だったら、その場でシャットダウンされてしまいます。

 2種類の聞き方テクニック

聞き方には、Passive Listening(受動的傾聴)と Active Listening(積極的傾聴)の2種類があります。どちらが良い、悪いということはなく、場合によって使い分けると効果的です。

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Passive Listeningは、基本的に相手の話を黙って聞く手法です。

もちろん、頷いたり「なるほどそうなんですね」などの相槌はして頂いてかまいません。普段みなさんがやっているのは受動的な聞き方だと思います。頷きながら聞いてもらえると、嬉しくて話してしまいますよね。まだ心の準備ができていなくて、たくさん質問をされるとプレッシャーを感じる人もいるかもしれません。

一方でActive Listeningは、誤解なくきちんと理解できるよう、絶えず相手に内容を確認しながら聞く手法です。

①相手に共感する ②相手が言ったことをオウム返しする ③質問をする、の3つを意識してください。

例えばAさんが「この前評判の店に行ったんだけど、すごく味が濃くて食べられなかったよね」とつぶやいたとします。

Paassive Listeningだと「へぇ、そうだったんだ」で良いのですが、Active Listeningの場合は「それは残念だったね」と相手に共感を示します。

そして「味が濃すぎると、食べられないよね」などとオウム返しをします。少し言い回しは変えますが、相手の言ったことをコピー&ペーストする感じです。

これは「あなたが発したメッセージを受け取りましたよ」という証明であり、「正しく理解していますよ」という確認にもなります。これをやると、「実は味が濃いというより、素材の味が生きていないから美味しくなかったんだよね」など、違う部分が問題の焦点だったのか、という場合もあったりします。

さらに、「塩分が多い食事を控えているの?」など、何でもいいので質問を入れます。話を膨らませることが大切だからです。

この3点を適切に入れていくと、何が話の焦点なのか、自分がきちんと理解できているのかを確認しながら取材を進めることができます。

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  取材の「クロージング」

取材の最後に、聞いた話をまとめることも重要です。「今日はありがとうございました。これから記事にしようと思いますが、●●のことを強くお話し頂いたのが印象に残っています」「ここが1つ目のポイントでしたよね」など、取材の「クロージング」として話を要約します。その場でポイントを確認でき、相手も「ちゃんと聞いて、大切なところを押さえてくれている」と案外嬉しかったりします。相手が実は違うポイントを強調したがっていた、という場合もあります。

取材というと身構えてしまいますが、日々のトレーニングが大切です。マラソンも、練習せずに42.195キロは走れません。友達や家族との会話の中で、少しずつ取り入れてみてください。

「奇跡も語る者がいなければ、どうしてそれを奇跡と呼べるだろう」という言葉もあるように、誰かが記録し、発信しているからこそ、私たちは知ることができます。しっかり聞き、文章として世界に残していくことに、取り組んでいただければと思います。

 

<講師プロフィール>

鎌倉幸子かまくら・さちこ):米バーモント州のSchool for International Trainingで異文化経営学修士。1999年、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会カンボジア事務所入職。図書館事業課コーディネーターとして500を超える小学校に図書室を設置する。東日本大震災の後、岩手県沿岸部で「いわてを走る!移動図書館プロジェクト」を立ち上げる。2016年1月、アカデミック・リソース・ガイドのリレーションズ・ストラテジストに着任。自身でもかまくらさちこ株式会社を立ち上げ代表取締役

 

<講座で使用した資料はこちらからご覧いただけます>

www.slideshare.net

 

 

本講座は、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環として行われています。