#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

どうすればもっと読んでもらえる? 筆者と読者が一緒に考える「伝わる記事の書き方」

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は7月6日、ダイヤモンド・オンラインに連載中のジャーナリストキャンプ報告記事を題材に、より伝わる記事にするための工夫を筆者と読者が一緒に考えるワークショップ「伝わる記事の書き方をみんなで考える」を実施しました。キャンプのデスクや参加者のほか、ダイヤモンド・オンラインの原英次郎編集長をゲストに迎え「読まれる記事」を生み出すために必要な視点についてもお話しいただきました。

参加者には事前に連載「震災後の福島に生きる」の記事を読んでおいてもらい、執筆者を交えた5グループに分かれて各記事の感想を話し合いました。

ジャーナリストキャンプでデスク役を務めた前ニコニコニュース編集長・亀松太郎さんチームの記事『マイナー被災地「いわき」の小ツアー 「線量計」と「語り部」でリアルを伝える』を巡っては、タイトルにもなっている「マイナー被災地」という表現について議論が交わされました。

参加者の1人は「被災地としてマイナーなのは本来良いことのはずで、ブランド被災地になればいいと言いたいわけじゃない、というのが伝わっていないかも」と指摘。キャッチーだけれど、記事が誤解を与えてしまう可能性もあるのでは?という問いに、亀松さんは「記事の本質的な部分を見出しにしたかったがどうしても地味なものしか浮かばず、読者に、おや?と思ってもらえるものを考えていたらマイナーが出てきた」と話し、読まれる見出しを考えるのにかなり苦労していたことを明かしました。
また、震災後のいわき市の実態を伝えるツアーを企画している側だけでなく、ツアーに参加した「受け手側」がどう感じているかは記事中では触れられず、一面的にしか伝わってこなかった、との意見もありました。一方、「こういうツアーがあることを初めて知った」「語り部が震災の体験を話すことで癒やされているというのは記事を読んで初めて分かった」と高評価も多く出ました。

アクセスランキングで1位を獲得した新志有裕さんの記事『仮設住宅が「見える化」する 暇すぎる独居オヤジの悲哀』については、見出しに登場する「オヤジ」「見える化」などのキーワードにまず興味をそそられた、という意見が多数ありました。

「新聞記事なら実名を出して取り上げるのに、この記事では全員匿名で『オヤジ』でまとめている。筋が1本通っていて、読み物としておもしろい」「この人たちはクリスマスや誕生日にはどうしているのか、というところまで興味が沸いた」などの感想の一方、「生き生きしているおじさんも取り上げて対比すれば記事に厚みが出たのでは」という指摘も出ました。
また、この記事はPV数の伸びに比べてFacebookの「いいね!」の数が低めだったことについて、新志さんは、オヤジの生き方に共感しづらい人が多かったのかも知れない、と話しました。

ディスカッション後は、ダイヤモンド・オンラインの原編集長から「読まれる記事とは何か」について講演して頂きました。原さんは、必要な要素として 1.誰も知らない事実か 2.ストーリー性があるか 3.分析の新しさがあるか― を挙げ「3つ揃えば満点だが、どれかを満たしていればインパクトのある記事になる」と話しました。

連載の中でも特に、2500近い「いいね!」を獲得した『原発事故と知的障害者 終わりなき流転の物語』と、今回のワークショップにも参加して下さった菅原聖司さんの『「どこにも行けない、ここにも居られない」フィリピンパブと仮設住宅で揺れる女性たち』の2本は「ほとんど知らない非日常を取り上げた作品で訴えるものがあった」といい、直観的に「これは来る!」と感じたそうです。
原さんでさえ「どういう記事が読まれるかは、未だに試行錯誤」だと言いますが、「重要なのはなぜ今それを取り上げるのかというタイミングと、鮮明な問題意識を持つことだ」とアドバイスしました。

ワークショップの様子は、今後アップされる参加者レポートでもお伝えしていきます。また、連載「震災後の福島に生きる」では今後も新しい記事が公開される予定ですので、どうぞお楽しみに!
(JCEJ運営委員・耳塚 佳代)

【関連リンク】<ダイヤモンドオンラインに連載中の記事>
ジャーナリストキャンプ報告「震災後の福島に生きる」全記事一覧


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