#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「震災、復興を超えた普遍的で面白いテーマを目指せ」――ジャーナリストキャンプ2016石巻がスタート

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が主催する「ジャーナリストキャンプ2016石巻」が29日、いよいよスタートしました。

舞台は宮城県石巻市。2011年、東日本大震災で大きな被害を受けたこの町も、5年の月日が流れる中で報道の数は減り続け、風化が進んでいます。

石巻は書き尽くされた」とも言われるなかで、全国から集まった5人のデスクと14人の参加者は、新たな視点で全国に届く記事を書くために学び合います。「5年目の石巻」での挑戦が始まりました。前日には、ジャーナリスト・津田大介さんによる情報発信講座も開かれました。

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デスクと記者たちは、早朝から活動を開始。朝9時、取材の指導からスタートしたのは、ジャーナリスト・亀松太郎デスクのチーム。

「どんな仮説を持って取材するのか」「誰を主人公にするのか」といった問題から、「読者に読みたいと思ってもらえるタイトルを考えること」「その人らしさが伝わる写真が大事」「取材で話を聞くときは図々しさも必要」などのテクニックまで、約2時間半にわたってアドバイスと議論が続きました。

震災、復興を超えた普遍性を

20時からは、今日の取材成果を話し合うディスカッションが開かれました。会場は、石巻駅から徒歩9分にある「ヤフー石巻復興ベース」。

この場所は、Yahoo! JAPANの現地事務所としてだけでなく、石巻に住む人々を中心としたコワーキングスペースとして機能しています。新しい石巻をつくるこの基地で、3日間にわたって議論が繰り広げられます。


ディスカッションに先駆けて、JCEJ代表・藤代裕之による講義が行われました。

東日本大震災に対する関心が下がる中で、多くの読者に読んでもらうためには、いかに自分事として考えてもらえる記事を書けるかが課題です。「震災、復興という話を超えた普遍的で面白いテーマに着地しなければいけない」と語ります。

今回、記事が掲載されるYahoo!ニュースに記事を出すことは「最高のマーケットに商品を出すことと同じ」。Yahoo!ニュースでは1日約4000本の記事が配信されますが、ヤフートピックスに掲載されるのは80~100本です。

取材テーマは、どのように世の中の話題とリンクしているのか。また関心のある層に向けて届けるためにも、どんな切り口が必要かを考えなければ、農作物や果物のように売れない結果になってしまう、と藤代代表は指摘しました。

「説得力ある記事を書くためには、事実をどう積み重ねるかが大切」「社会の問題から逆算するのではなく、自分の関心からはじめること」だとして、「ジャーナリストキャンプは良い記事を書くプロセスを理解して、学ぶ場だ」と参加者に訴えました。

その後、参加者の一人ひとりが、現時点でのタイトルと概要を発表。被災地と恋愛、パチンコ依存症、ラッパーとレゲエ、限界集落、日本酒、農家、などのテーマが飛びだしました。

デスクからは、「見立てが甘いのでは」「ありふれた震災に関する記事で終わってしまうのではないか」という厳しい意見もありましたが、「自分の興味関心がどこにあるのか、改めて向き合ってみては?」など多様な視点からのアドバイスがありました。各参加者は、さらに問題意識を研ぎ澄ませ、記事の完成に向けてブラッシュアップしています。

議論は午前2時過ぎまで

その後、デスク、参加者、JCEJ運営委員が入り混じって各参加者と議論をするワークショップを実施。自分が所属する班のデスクやメンバー以外とも積極的に交流し、お互いに取材の課題や記事のポイントについて話し合いが続きました。

会場から全員が撤収したのは午前2時過ぎ。「ジャーナリストキャンプ2016石巻」は、まだまだこれからが本番です。