#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「フェイクニュース」という言葉を使わず考えよう ー EAVIのメディアリテラシー教材日本語版を作成しました!

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は、欧州でメディアリテラシー教育を推進する非営利団体EAVIが作成した授業用教材「フェイクニュースという言葉を使わず考えてみよう ー 10種類の情報区分」(Beyond 'fake news' - 10 types of misleading news)を邦訳、無料公開しました。

※日本語版のダウンロードはこちらから

インターネット上では、いわゆる「フェイク(偽)ニュース」が問題になり、信頼できる情報を見分けるのは困難です。しかし、記事広告やミスリーディングな画像、善意で拡散される誤情報など、私たちに悪影響を及ぼし、混乱を招くコンテンツはさまざまです。そうした情報を「フェイクニュース」という言葉でひとくくりにせず、分類して考えながら、議論を促すのがこの教材の目的です。授業などで、教員や講師の説明と合わせて使用する前提で作られています。

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 JCEJは、EAVIの許可を受けて邦訳しています。EAVIのホームページでは、日本語・英語を含む11言語で教材がダウンロードできます。詳しい説明は以下をご覧ください。

教材の意図・使い方について(EAVIホームページより抜粋)

Our Beyond Fake News infographic identifies the 10 types of potentially misleading news. It was created to be used in class with real-world examples to spark classroom debate and reflection on the ways that media is constructed.

We are loath to put the term ‘fake news’ in the title of the infographic as, ironically, the term itself is a misleading simplification. Apart from the fact that the term has been co-opted to attack and silence mainstream media, the suggestion that there are simply two types of news; real and fake, doesn’t leave much room for nuance.

このインフォグラフィックでは、誤解を与えやすい情報を10種類に分類しています。実例とともに授業で使用し、議論を促したりメディアの構造について考えたりすることを想定しています。

フェイクニュース」という言葉をタイトルに使うのは、あまり気が進みませんでした。皮肉なことに、この単語自体が、情報環境を単純化していて、誤解を生みやすいものだからです。「フェイクニュース」という言葉は、主要メディアを攻撃し、黙らせるために使われています。また、情報には「リアル」と「フェイク」の2種類しかないという考え方では、単純な議論しかできません。

The 10 types - 10区分

Of course, neither of the 10 types can be seen in isolation to the others. Partisan news outlets may also be identified as propaganda. And propaganda can be found in a sponsored post. Pseudoscience and conspiracy theories certainly enjoy each others company, see: anti-vaccination movement and climate change denialism. Likewise, completely bogus content may entice its audience with a clickbait headline. Finding examples and identifying which categories they fit into is all part of the fun of using this graphic.

もちろん、10種類の情報はどれも、独立したものではありません。極端に偏った政治的情報を流すサイトは、プロパガンダとも言えるかもしれません。プロパガンダは、スポンサー記事として私たちの目に触れることもあるでしょう。また、ニセ科学陰謀論は(例えば反ワクチン運動や地球温暖化の否定論のように)互いに「好相性」です。同様に、完全なねつ造コンテンツは、釣りタイトルで読者の気を引こうとします。この教材を使うことで、楽しみながら事例を見つけ、どのカテゴリーに分類されるのかを考えることができます。

The motivations - 動機

The motivations behind certain kinds of content can be many and varied. Money or power are almost always present however, there may be other motivations at play. A pseudoscientific column about climate change may be motivated by a certain ideological or political cause. However, another form of pseudoscience, health news, which some have identified as being among the most prolific in the ‘fake news’ typology, might be motivated by money or share similarities with clickbait characteristics; “The Secret Diet Your Doctor Won’t Tell You About” is a familiar refrain.

コンテンツ作成の動機は一つではなく、さまざまでしょう。金銭や権力が背景にあるのは常ですが、ほかの理由が働いている場合もあります。特定のイデオロギーや政治的な大義から、地球温暖化に関する科学的根拠のない記事が広まることもあります。また、ニセ健康情報の蔓延は「フェイクニュース」の中で最も深刻だと言う人もいますが、金銭目的のことも多く、釣りタイトルに似た手法が使われています。「医者が教えてくれない秘密の食事法」といったタイトルは常套句です。

Impact levels - 影響度

 The impact levels are not definitive either. For instance, some students may feel that conspiracy theories are just a bit of fun, while some of us reflect that the propagation of one recent conspiracy theory led to an actual incident of violence; Pizzagate.

We hope our infographic will prompt healthy discussion. 

教材で示している影響度も、決定的なものではありません。例えば、陰謀論はちょっとしたユーモアだと考える生徒がいるかもしれません。一方、「ピザゲート」事件のように、陰謀論が実際の事件に発展してしまった例を思い浮かべる人もいるでしょう。

この教材が健全な議論につながることを願います。