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#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の活動を紹介しています!

「信頼を得るのに近道はない」 第1回アワード出展のサイボウズが語る企業メディアによる問題提起

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)主催の「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」が1月28日(土)に法政大学で開催されます。このアワードは、ネット上の作品の作り手と受け手が交流し、参加者の投票でネットにおけるジャーナリズムの頂点を決める“お祭り”です。

ジャーナリズムの頂点を決めるという言葉から、新聞社やテレビ局など既存メディアだけが集まると感じる方もいるかもしれませんが、社会のために発信している作品であれば、企業メディアや広告作品も出展可能です。

第1回のアワードでは、働くママのリアルを描き大きな反響を生んだ動画作品ワークスタイルムービー「大丈夫」サイボウズさんに出展いただきました。


サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」 イラストアニメバージョン

良い取り組みをしている企業メディアや広告作品の担当者に、もっとアワードを知ってもらいたい。そのために企業メディアでありながら「働き方」の問題提起をつづけるサイボウズさんの事例をあらためて紹介したい。そう考えて、サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 部長の大槻幸夫さんに話を伺いました。

大きな反響を呼んだワークスタイルムービー「大丈夫」制作の裏側

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サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 部長 大槻幸夫さん

――2014年に公開したワークスタイルムービー「大丈夫」は、大きな反響を呼びましたが、なぜ動画をつくることになったのでしょうか。

社長の青野から、サイボウズの知名度向上のため、いま取り組んでいる「働き方変革」をテーマに新機軸の訴求を考えてほしい、そして、いま一番苦労が大きいワーキングマザーを主人公にしたいとオーダーを受けたのがきっかけです。ワーキングマザーの方に共感してもらうためには、文字だけではなく映像が良いと考えて、ソーシャル上で話題になるような2~3分の動画を制作しました。

――ワークスタイルムービー「大丈夫」の公開後、何か印象的だった出来事があれば教えてください。

ニュース番組に取り上げられたことです。ノーカットで映像を流していただき、内容について語ってもらえたのは印象的でした。あとは企業や行政の方から、女性の働き方を考える勉強会の冒頭に流したいなどの問い合わせがいまだに来ています。

――ワークスタイルムービー「大丈夫」は第1回のアワードに出展いただきました。アワードに参加して感じたことを教えてください。

普段つながりのない業界のひとたちと触れ合うのは、はじめての体験でした。データジャーナリズム特別賞を受賞した沖縄タイムスの「地図が語る戦没者の足跡」などをみて、こうした地道な活動にスポットライトがあたる良い取り組みだと思いました。

ただ、第1回は新聞社やニュースサイトなど既存メディアの出展が多かったので、もうすこし若い人や新しいメディアが集まる場になると良いと感じました。

賛否両論どちらも可視化することが問題提起につながる

――動画作品には、賛否両論さまざまな反応がありました。批判が起きることは企業側からすると炎上リスクになると思いますが、社内ではどう考えていたのでしょうか。

当時、「ワーキングマザー」をテーマにしたCMに対して否定的な意見が起きがちだったので、批判の声は予想していました。ただ、私たちはあの映像で描いた世界観を良いと考えているわけではなく、いま起きている問題をみんなで考えようというスタンスでした。

そこで、ワークスタイルムービー「大丈夫」では動画作品に対するツイートをサイトにまとめました。答えのない問題なので、賛否両論さまざまな意見があると気付いてもらえる構造にしています。

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ワークスタイルムービー「大丈夫」特設サイトで、動画に対するツイートを表示

――賛否両論どちらも可視化することが問題提起になるという意味ですね。

ここ2~3年で感じたのは、情報リテラシーの高い先端層と一般層の間に大きな壁があることです。先端層はロジックを重視する人たちなので、映像をみて「なぜ男性は女性の働き方に理解がないんだ」といった批判の声が出てきます。

しかし、一般層はロジックよりも感情的なものが響くので「感動した」「私をみているみたい」といった共感の声が多かったです。その両方をサイトで取り上げることでメタ的な視点でこの問題の複雑さを知ってもらえればと思いました。サイボウズの企業メディアは、先端層と一般層の間をつなぐ役割が果たせれば、と思っています。

なぜ、サイボウズは「働き方」の問題提起をつづけるのか

――ワークスタイルムービー「大丈夫」やオウンドメディア「サイボウズ式」などで、「働き方」に関する問題提起を続ける背景を教えてください。

発端は「新しい顧客の獲得が上手くいっていない」というプロモーション上の課題意識からです。新しい層にサイボウズを知ってもらうためには、これまでと違う発想が必要です。ただ社名を認知してもらうだけではなく、私たちがグループウェアを提供する意義を伝えたい。そう考えた時に「働き方」に関する情報発信が重要だと気づきました。

私たちの問題提起がうまく広がり、社会の声となって「働き方」の改善が進めば必ずITツールの助けが必要となります。そうすれば、グループウェアを提供する弊社が役に立てる場所ができるだろうと、長期的な視点を持って取り組んでいます。

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サイボウズ式 トップページ

――サイボウズ式は、企業がブランドやユーザーに関する出来事を記事にする「ブランドジャーナリズム」の事例としても取り上げられていますよね。

運営する側として一番気をつけているのは、会社が伝えたいことを伝えないことです。製品のPRをするのではなく、世の中の関心事を取り上げて問題提起することでサイボウズの企業姿勢を伝える感覚で運営しています。なので、ブランドジャーナリズムの事例として取り上げられるのは嬉しいですね。

事業運営には信頼が大事 近道はないと気づいた4年間

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――サイボウズ式はブランディングを目的としたオウンドメディアですが、社会課題の解決に向けた情報発信を続けています。企業のオウンドメディアと、既存メディアの差は何だと考えていますか。

決定的なのはビジネスモデルの違いですよね。既存のニュースサイトの多くは広告収入で成り立っていますが、サイボウズ式は自社の売上で成り立っています。なので、記事を読んでもらうことに専念できます。扱うネタの範囲を企業活動に関連する分野に絞ってはいますが、記事の信頼性には差がないという想いでやっています。

――信頼性という点では、2016年にはキュレーションメディアの問題がありましたよね。

騒動を通じて、メディアは「読者の知りたいという欲求に応えようという想い」から始まっていることが信頼につながるのだとあらためて感じました。弊社がサイボウズ式やワークスタイルムービー「大丈夫」を制作したのも、ユーザーから信頼を獲得するためです。信頼を得るためには日本企業のワークスタイルの今を伝えたいという想いを忘れず地道に情報発信を続けていくしかない、近道はないとこの4年間で改めて気づきました。

(聞き手・構成:武富陵一郎)

1月28日に開催する「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」は、今回で3回目。作品の作り手と受け手が直接交流し、優れた作品をみんなの投票で選ぶイベントです。組織や業界の垣根を越えて、切磋琢磨する仲間と出会い、語り合える場にしたいと考えています。

「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2017」の作品応募に関しては下記のブログを参考にしてください。

【一般参加者について】一般参加者は、作品展示を見ながら出品者と交流、賞を決定する投票を行うことが出来ます。参加費は1,000円(受付でお支払ください)、学生は無料です。詳しくは下記のブログをごらん下さい。