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「目に見えない復興」、伝えたい 学生インターン2013夏・活動報告(4)

夏の学生インターンシップ活動報告第4回は、関西大学3年の竹田幹さんです。自分で大槌町に行ったからこそ、テレビなどの報道では分からなかったことが見え、それを伝えたいという思いが芽生えたそうです。

■変化していない部分は、伝わりにくい
2011年の震災当時、公務員の父が震災支援で派遣されたのが大槌町だった。その時に父が撮影した写真を見て、その土地が今どうなっているかをこの目で見てみたいと思っていた。インターンの初日、早速写真の場所をいくつか見て回った。瓦礫はどこも撤去され、元に戻っているというイメージだったが、津波で何もかもが流されたところはそうではなかった。そこは一面雑草が生い茂り何も手を付けられていないようだった。テレビなどで「復興は進んでいる」と耳にしていた分、想像とは違う現状に驚くばかりだった。メディアは被災地の何か変化したところを報道する。つまり何も変わっていない部分は報道されにくく、メディアを通じてあまり知ることはできない。そのせいで「復興は進んでいる」と錯覚していたのだと思う。

■「心は泣いているんだよ」
インターン期間中は仮設住宅の集会所で写真教室を行ったが、そこでは色んな方から話を聞くことができた。特に心に残る話をしてくださったのは、参加者の1人で、とても明るく元気なおばあちゃんだった。ジョークを飛ばして、周りにいる人を笑わせたり、率先して写真を撮ったり。写真教室も楽しんでくれているようだった。私は「すごく元気ですね」と声をかけた。するとおばあちゃんは、「いつも元気だよ、けどね・・・心は泣いているんだよ」と答えた。 一瞬、自分の中で時間が止まったように感じた。
おばあちゃんは続けた。「私はいつも元気だよ。ボランティアで来てくれた人の前では特にそう。私たちが前向きにならないと震災でなくなった人に申し訳ないし、せっかく遠いところから来てくれているのに自分が元気じゃないと私たちのために来てくれた人に申し訳ない。いろんな人と話せるから私はいつも元気でいられる。けれどまだまだ震災を忘れることはできなくて心は泣いている」。 言葉が出なかった。とても元気で、そんな風に感じているようには思えなかったからだ。

写真教室に参加してくれた他の方々も、本当に笑顔の絶えない方たちだった。「目に見える復興」はテレビで触れる機会が多いが、「心の復興」について伝えられる機会はあまりないように感じる。だからこそ直接話を聞いた人が他の人々に伝えなければならない。今回のインターンに参加して、実際に現地に行ってみないとわからないことも多くあること、そしてそれらを伝えることの必要性を今まで以上に感じた。また、写真教室を通じて、徐々に芽生えている現地の方による情報発信がさらに飛躍することを強く願う。
(学生インターン・竹田 幹)

<関連リンク>
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