#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「バカライターが一目置かれた感じ」 前回アワード予選1位のヨッピーさんがジャーナリズムをマジメに語る!

「オモコロ」「トゥギャッチ」など幅広いウェブ媒体で記事を執筆し、多くのファンを獲得しているヨッピーさん(34)。2014年の作品が対象になった前回のジャーナリズム・イノベーション・アワードに出品した『悪質バイラルメディアにはどう対処すべき?BUZZNEWSをフルボッコにしてみた』は予選を1位で通過し、決勝プレゼンに進出。背景には、「バイラルメディア」の一部が他人のテキストや画像、動画などを盗用する問題があり、これに対して行動を起こしたヨッピーさんの記事は大きな注目を集めました。

そんなヨッピーさんに、実際のアワードで感じたことや、ジャーナリズムについてマジメに語っていただきました!

※アワードは2016年3月12日(土)開催。チケットはこちらのサイトからCチケットをご購入ください


(ヨッピーさんいわく「バイラルメディアのエラそうな社長さんがインタビューに答えている風」)


▽「バカライター」とみられていたけど

Q:バイラルメディアの記事はどういう経緯で書かれたんでしょうか?

ぼくの周りのライターで、BUZZNEWSに記事をパクられていて怒ってた人が居たんですね。で、その時はクレームを入れたらすぐに削除したんですけど、また同じ事があったのでBUZZNEWSのログを見たら、ものすごく、それはもう大量に色んな人からパクっていることがわかりました。しかもBUZZNEWSの人が受けていたインタビューを見たら「これからの時代はバイラルメディアですよみなさん!これが時代の最先端やで!」って、めちゃくちゃ調子に乗っていたわけですよ。

それを見て「パクリ野郎のトンチキが何言ってんだこのべらぼうめ!」みたいな感じでものすごく腹が立ちまして。まあ実際は江戸弁ではなかったですけど。
当時は、バイラルメディアを「斬新なスタイルの新しいメディア」みたいに持ち上げる人達もけっこういて、どんどん新規参入も増えててどんどんパクられ被害も増えて行くし、僕らみたいな一次コンテンツを作ってる身からしたら「こんなもんが蔓延したらたまらん」っていう雰囲気はあったと思います。

まあ、バイラルメディアもコソコソやっている分にはそこまで怒らなかったと思うんですよ。たとえば、自分の子供、まだ中学生の子供が親に隠れてね、夜中にこっそりベランダでタバコをふかしてるくらいならまだ可愛げがあるじゃないですか。「おい、やめとけよ」くらいで済むかも知れない。でもそれがリビングで堂々と吸い出したらもうぶん殴るしかないじゃないですか。

バイラルメディアも同じで、コソコソやってるぶんにはそれほど目くじら立てて怒る気になりませんが、「新しいメディアです!いつでもどこでも儲かります!」って言って調子こいてインタビューに答えたり、イベント主催したりしだしたらもうガツンといくしかないのかなぁと。まあでも、そのおかげで「バイラルメディア」っていうワード自体に「ダサい」「パクリ野郎」みたいなイメージがついたので、最近は前に出てきて堂々と言う人たちはいなくなってきましたね。



Q:記事への反応はどうだったんでしょうか。

もう色んなところからめちゃくちゃ反響があって、「神」みたいな扱いを受けててビックリしました。それを受けて僕も「あ、僕って神になったんだ?」と思って、調子こいて葉巻片手にバスローブ姿でペルシャ猫撫でてたら神扱いも2日くらいで終わりましたね。「ヨッピーさん!」「ヨッピー神!」みたいな扱いだったのに2日後には普通に「おい、ピーヨツ!」って完全に元通りですからね。インターネット冷たいわー、って。

まあでも、この記事は全然特殊なことはしてないんですよ。裏ワザも使わずにただ腹立ったことを正面から書いただけです。それなのにこんなに褒められるんだ、と思いました。変なの。


Q:アワードに出展してから、何か変化はありましたか?

僕にもよくわかんないんですけど、なんとなく「一目置かれた感」みたいなのはありましたね。いつもふざけた記事ばっかり書いているから「バカライター」「クズ」「インターネットのゴミ」みたいな感じでみられていたんですけど、「おっ!たまにはやるやんけ!」と思われるようになったのかなぁと。

アワード当日には、会場で津田大介さんとかのえらい人達にも「あれ良かったです!」って声をかけてもらえたり。



予選投票で1位になったのはマジでびっくりしましたけど。文章と写真だけの記事1本で、「え!? これの何がイノベーションなの!?」って。NHKさんとか、新聞社さんとか、各大手メディアがいる中で僕に票が入ったので「ちょっと、大丈夫?」って。

その後の決勝プレゼンは全然ダメで、落ちてしまったんですが、それで良かったと思っています。僕のはジャーナリズムでもイノベーションでもないですからねあんなもん! ただ、当日は、新聞社やテレビ局のえらい人達とも話せて刺激的でしたね。僕なんて普段は低IQの連中にばかり囲まれてるんで自分もなんかえらくなった気がしました。気がしただけですけど。



▽アワードに出てほしいのは「やまもといちろうさん」

Q:ヨッピーさんが考えるジャーナリズムって、どんなものですか?

ジャーナリズムって何なのかいまだによく分からないのですが、ジャーナリストって、世の中に対する怒りの強い人が多いのかなと思ってます。

例えば(ステルスマーケティング問題などを追及している)やまもといちろうさんなんかもそうですね。やまもとさんがやっていることって、あれは完全にジャーナリズムじゃないですか。総合すると、「ズルしちゃダメでしょ?」ってことだと思うんですけど、バイラルメディアも、アプリダウンロード水増しも、ステマも「ズルすると損する」という世界になってほしいです。

やまもとさんはインターネット上で一人で勝手に「自主審判」みたいなことをゴリゴリやってらっしゃる、みたいなイメージなんですが、そういう人こそが大事だと思ってまして。そういうズルをする連中が得をする社会だと、僕みたいな割とコツコツ真面目にやるタイプの人間が食べていけなくなってしまうので。やまもとさんには、ぜひアワードに来て欲しいです!

Q:ヨッピーさんの面白い記事は数えきれないほどありますが、何か参考にされているものはあるんですか?

テレビ番組ですけど、「電波少年」と「探偵ナイトスクープ」ですね。ネットの記事ってインターネットを意識しすぎるから企画があんまり出てこなかったりするのかなーってなんとなく思ってます。僕は割とバラエティ番組を作るくらいのイメージで企画を考えていますね。

2年くらい前からウェブのプレイヤーがあんまり変わっていないので、新しい人に出てきて欲しいなぁとは思ってるんですが、最初はどうしても儲からないので、ビジネスとして成立してない期間を乗り切れるかどうかがポイントで、そこで挫折する人も多いんだろうなーと。別に基礎がなくたって良いんですよね。ネットで文章書くのが好きだったらウェブライターになんて簡単になれますよ。僕も、文章だの企画だのは誰にも習ってないですし。



▽炎上させずに自分の意見を通すコツ

Q:今年書かれた記事の中で、印象深いものはありますか?

「市長って本当にシムシティが上手いの?千葉市長とガチンコ勝負してみた」はPV数も反響も良かったですね。行政とか政治、市長っていうような割とお堅い業界の魅力を伝えるやり方としては、新しい手法だったんじゃないかなと自画自賛してます。

「取材方法のイノベーション」としてアワードに出してみようかな。予選落ちしそうだけど。


Q:ヨッピーさんの記事は、どれも炎上せずヒットしている印象があります。

単純に炎上するのが嫌なだけなんです。だから全力で回避する、と。僕って完全に「豚もおだてりゃ木に登るタイプ」なんですよ。人に褒められたり面白いって言って貰えるのが嬉しくてネットで記事を書き始めたのに、書いた記事で人に怒られたり炎上したりしてたら本末転倒じゃないですか。かと言って僕は割と言いたがりなので、ずーっと黙っても居られないっていうややこしい性格をしておりまして。

ただね、炎上する人達って「反発を恐れずに発言しろ」みたいなことを言いがちじゃないですか。でも僕に言わせれば反発を買いながら自分の意見を言うのってベストな選択では絶対にないんですよ。最上は「相手の反発を買わずに、自分の意見を通すこと」ですよね。どう考えたってそうです。じゃないと人は動きませんから。だから、言いたい事とか主張したい事があれば、「どうしたら炎上せず、反発を受けずに持論を受け入れて貰えるか?」ということは考えますね。反発されずに自分の意見を通すっていうスキルです。

たとえば、ベビーカー問題ってあったじゃないですか。ベビーカーを電車内で畳むのか畳まないのかっていう。僕はベビーカーを電車の中に持っていくのは全然OK派なんですよ。でも、僕が単純に「ベビーカー持ち込んで何が悪いんだ!」って言っても反対意見がたくさん来るだけだと思うんです。実際に賛成派と反対派がバチバチやってましたし。そこで考えたのが「自分が一日お母さんになる」っていう手法ですね。「主婦は本当に大変?33歳のおっさんが一日お母さんになってきた」という記事にしたんですけど、一日お母さんになって、3歳児抱えて掃除機かけるのは腰が痛くなるし、目を離すとすぐどっか行くし大変ってことを実体験した上で、「だからベビーカーって必要ですよね」っていう結論に持っていったんです。そしたら批判なんて一切無かったですもん。ちゃんと体験してる所を見せて、その上で「こりゃ大変だわ」って結論出したらまあそう簡単には文句言えないじゃないですか。特に何もしてない人が「ベビーカーは邪魔」なんてそうそう言えなくなりますよね。


▽"YOU"が選ばれる場

Q:最後に、今回のアワードに期待することがあればお願いします!

ジャーナリズムでも広告業界でも、内輪だけで集まって視野が狭くなるのはあまり良くないと思います。ジャーナリストの人だけではなく、普通の人も気軽に参加して、みんなで集まれるものになったらいいなって。

TIME誌の2006年「パーソン・オブ・ザ・イヤー」は“YOU”でしたよね。特定の人ではなく「あなた」。それと同じように、アワードも“YOU”が選ばれる場所であるべきだと思います。これを見ている人でも、「そういえばこれ、ジャーナリズムだわ」みたいな出来事があればガシガシ応募すべきですよ。



(「これからは、バイラルです!」と、特技にしてるバイラルメディア社長のモノマネをするヨッピーさん)

…っていうことを言えばいいんですよね?(笑)

「今回もアワードに出てくださいますか?」と質問したところ、「出すものないですよ」と言いつつ、まんざらでもなさそうだったので…今回もヨッピーさんに出品していただけることを心より楽しみにしています!(JCEJアワード運営サポート・小野ヒデコ)
※応募、推薦はこちらから受け付けています。

来年3月12日に開催する「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」は、今回で2回目。作品の作り手と受け手が直接交流し、優れた作品をみんなの投票で選ぶイベントです。組織や業界の垣根を越えて、切磋琢磨する仲間と出会い、語り合える場にしたいと考えています。ぜひ、あなたの作品を応募してみませんか。この作品が良かった、という推薦も受け付け中です。※応募は終了しました※

当日参加のチケットはこちらのサイトからCチケットをご購入ください!