#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の活動を紹介しています!

ウェブで伝わる文章を書くための3つのポイント「東北ローカルジャーナリスト育成事業」レポート

多くの情報が溢れるウェブで「伝わる」文章を書くためには何が必要か。Yahoo!知恵袋の生みの親であり、『ウェブでの<伝わる>文章の書き方』(講談社新書)の著者でもある、アカデミック・リソース・ガイド代表・岡本真さん(@arg)は3つのポイントがあると言います。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が開催した「東北ローカルジャーナリスト育成事業」での岡本さんの講義詳細をお届けします。

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「伝える」と「伝わる」は違う

そもそも、「伝わる」の定義は何でしょうか。もちろん絶対的な正解があるわけではないですが、私は「伝える」と「伝わる」は、違うと思っています。

私はよく、会社のスタッフに「岡本さん、あの件はどうなっていますか?」と聞かれ、「そんなこと言われたっけ?」ということがあります。そうすると部下は「私は伝えましたよ」と言う。これは、上司が怒るポイントです(笑)。判断を求められる立場の人間は、判断を依頼する人よりも多くの情報を扱わなくてはなりません。

つまり、「伝えましたよ」ではなく、相手にちゃんと「伝わったか」を確認する必要があるのです。自分が期待している行動を相手が取ってくれて、初めて「伝わった」と言えるのではないでしょうか。 

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情報が多すぎて目に留めてもらえない

ウェブが登場してから、誰でも無料で、簡単に情報発信できるようになりました。これはすごくいいことですが、一方で「情報が多すぎる」という大きな問題を生み出しています。そもそも、自分が発信する情報を目に留めてすらもらえないのです。

googleでの検索をイメージしてみてください。

検索結果から、気になったリンクをクリックします。実際、何行くらい読むでしょうか?Yahoo!googleのような検索エンジンは、利用者が何番目のリンクをクリックし、何秒以内に別のページに行ったかをすべて測定しています。すぐに前のページに戻ってしまったら、それはその人にとって良い情報ではなかったと判断されます。

パッと見た瞬間に「これは自分が探していた情報だ」と思ってもらえなければ、瞬時に見切られてしまいます。目に留めてもらい、さらに読んでもらうための工夫が必要です。

伝わる文章を書くための3つのポイント

ウェブで伝わる文章を書くために、以下の3つのポイントを意識してみてください。f:id:jcej:20161214114923j:plain

 

Yahoo!トップで見出しを学ぶ
私たちは見出しを見て判断するので、「その先を読みたい」、つまり「リンクをクリックしよう」と思わせるは、見出しにある程度の力が必要です。

良い見出しを付けるには、日頃の修練が大切です。これを学ぶ上で最も良いのは、Yahoo!のトップページだと思います。

トップページの見出しは、原則13文字程度で構成されています。プロの新聞・雑誌・テレビ記者が書いた記事の見出しを、Yahoo!側でさらに再編集し、ウェブでクリックされやすい短さに編集します。人がパッと見たとき、横書きで瞬時に意味・内容を理解できる限界が、13文字程度と言われています。

実際に記事を読んで、自分なら13文字以内でどう表現するかを考えてみてください。多くの人には新聞記者や編集者としての経験はありませんが、経験がなくても、練習すれば上手く必ずなります。

1つ気をつけてほしいのは、「煽る見出し」になってはいけないということです。煽ってたくさんクリックされても、結果的に読者をがっかりさせる可能性が高い。そうなると、次に発信する情報は信頼されなくなります。つまり「狼少年化」してしまうのです。相手に多大な期待を与えるような表現は慎みましょう。

 

②ウェブならではの4W1H
4W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どのように)は、ジャーナリストにとって基本中の基本とされる情報の構成要素です。

この中でも重要なのは「いつ」と「どこで」です。私たちが情報発信するとき、だいたいの場合は何かのお誘いやイベントの案内ではないでしょうか。例えば、年末の忘年会や地域の大掃除、町内会の街頭募金に協力してくれる人を募る。会社なら、年末年始休暇のお知らせ。多くの場合、大きな要素は時間です。そして、集まる場所はどこか。"When"と"Where"は非常にポイントです。

例えば、「ウェブ文章講座」のお知らせとして適切なものはどれでしょうか。

・「ウェブ文章講座」を実施(2016年11月11日、於・◯◯公民館)
・◯◯公民館にて「ウェブ文章講座」を実施(2016年11月11日)
・2016年11月11日(土)、◯◯公民館にてウェブ文章講座」を実施

"What"も大事ですが、それ以上にきちんと書くべきなのは「いつ」と「どこ」です。

イベントの案内を読んだ人が「参加したいな」と思ったら、まず「行けるか」を考えます。他の予定がないか、勤務日ではないか、子供の世話や先約があるか…...が頭に浮かびます。同時に気にするのは「場所」です。物理的に行けるかどうかに関わってくる情報だからです。

また、「2016年」はなるべく省略しないようにします。その情報が過去の情報になった時に厄介だからです。昨年の情報を見て間違えて申し込むということがないよう、配慮が必要です。どの並び順も悪くはないですが、情報を伝えたい相手、つまり読者層がどんな人かを意識して、使い分けるのが良いと思います。

曜日の情報も重要です。世の中の圧倒的多数の人は曜日感覚を持って生活しています。「このイベントの日は何曜日だっけ」という手間があると、参加するかどうかは判断されずに終わってしまいます。絶対にあとでは読みません。曜日を入れることは、ぜひ意識してください。

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 ③ウェブの特性を活かした文体を使う

ウェブの「特性」を考えた文章も重要です。公に発信するものであっても、あまり硬すぎる文章はよくありません。礼儀正しすぎる文章だと読んでもらえません。ただ砕けれてばいいというわけではありませんが、ウェブに馴染む文章形態を考える必要があります。そのために、以下の8つのポイントを押さえましょう。

 

1.短文にする

一文一文は短くしましょう。文学作品であれば別ですが、文章は短いに越したことはありません。1行40文字を目安に、一文は3行くらいに収めます。

 

2.改行する
きちんと改行を入れましょう。専門的な話になりますが、HTMLというウェブページを表現するための「タグ」というものがあり、<P>タグと<BR>タグの2種類あります。<P>を使うと行間が広がります。<BR>を使うと行間が変わりません。ウェブの場合、<P>の改行幅・空白欄があった方が見やすいです。

 

3. 箇条書きにする

日本語ではあまり箇条書きをしませんが、伝える事柄によってはその方が分かりやすい場合があります。例えば、参加条件などはダラダラ書くよりも、箇条書きの方が絶対に分かりやすいです。

 

4.リンクする
追加的に見てほしい情報は「リンク先をご覧ください」とすれば、1つのページに入れ込む情報をあまり多くせずに済みます。

 

5.画像を使う

文章より、ビジュアルで見せた方が早い場合があります。例えば地図。会場へのアクセスマップをつけた方がはるかに分かりやすく、文字で説明するのは難しいです。
ただ、視覚障害者の方にとっては画像は非常に分かりづらいことを知っておくべきです。視覚障害者の方は読み上げソフトを使い、そこに何が書かれているのかを音で聞き取ります。公の事柄など、すべての人を対象にする場合は、画像の使い方を意識しましょう。

 

6.変化を明示する

何かの変更が生じた時は、きちんとビフォア・アフターを併記する方が分かりやすくなります。きちんと明記しないと、やっている側に悪意がなくてもーー特に公的な告知の場合はーー「都合の悪いことを隠しているのではないか」と批判される場合があります。

これは「情報の非対称性」、つまり、発信側と受け手側では、持っている情報量に圧倒的な差があるためです。ここで丁寧さを欠いてしまうと、痛い目に遭います。

 

7.専門用語を避ける
どんな分野でも専門用語がありますが、なるべく使うのを避けましょう。例えば、私が仕事で関わっている図書館の世界は専門用語の宝庫です。図書館用語では、本棚のことを「書架」といいますが、そう言われて分かるでしょうか?
その世界では便利な言葉でも、一般の人に発信する場合、逆に分からなくなってしまう。専門用語があるだけで、ハードルは高くなってしまいます。1番いいのは、自分と違う職業の人に「これって分かる?」と聞いてみることです。


8.繰り返し見直す
プロは繰り返し見直す、あるいは自分の文章を人に読んでもらいます。

実際に発信してみた結果を振り返り、次はさらに洗練されたものに作り変えていきます。その場しのぎ、場当たり的な発信では、文章能力は一向に向上しません。真面目にひたすら反復をして、反省し、復習する。それに尽きると思います。

ウェブ発信のリスク

同時に、発信することの「リスク」も十分に認識する必要があります。
もちろん、発信は可能性に満ちていますが、容易に発信できるからこそリスクもあります。常に考えてほしい4つのポイントがあります。

1.全世界に向けて発信していることを意識して

ウェブでの発信内容は、常に拡散される可能性があります。ツイッターに投稿したことがリツイートされ、facebookに書いたことがたくさんの人にシェアされ、その結果大きな反響を呼ぶ。それが良い方向であれば問題ないですが、逆もあります。

例えば日本では、福島第一原発事故について「福島の人は騙されている」「福島の果物や野菜は危険だ」と、科学的根拠なしに書き立てる人たちもいます。原発災害そのものをどう評価するかは別の問題ですが、科学的根拠なしに書くことはとても危険で、無責任です。そういった行為は、自分に対してブーメランのように返ってきます。「根拠もなく、こんなことを書いている人がいる」と見られてしまうのです。
自分は居酒屋トーク気分で話したことでも、ウェブに書いたことは原則的に全世界に公開しているものだと思ってください。悪い内容として、制裁的な意味で拡散されてしまうこともあります。そうなると、もはや止めようがありません。

2.誤読されるリスク

ウェブに限らず、発信した情報が「誤読される可能性」があるということもきちんと理解しておきましょう。

鶴見俊輔という有名な学者が「誤読する権利」という言葉を残していますが、悪意がなくても誤解されることはあり得るし、また「悪意を持って」曲解される場合もあるでしょう。自分の意図が100パーセント全ての人に理解してもらえるわけではないのです。

3. ウェブに書いたことは消せない

「都合が悪ければすぐ消せばいい」と思うかもしれませんが、ウェブでは、問題発言ほど即座に記録され、コピーを取られてしまいます。残念ながら、他人の発信の「あら探し」をしている人もいるのです。
「あの発言はまずかったかな」と思い3日後に削除しようとしても、その時点では誰かが必ず保存しています。「この内容で批判を受けてもかまわない」と思える覚悟がなければいけません。
問題だと思った記事を丸ごと削除してしまうと、さらに大炎上します。「逃げた」というレッテルを貼られるのです。一番良いのは、元の記事に不適切な内容があれば、削除ではなく追記することです。「私の考えが間違っていました」と認め、傷つけてしまった人がいたら誠意を持って謝罪する。記事を消すと、ますます人は怒ります。

4.熱狂に走らない
良い情報を発信していくと、評価されるようになります。その時に、熱狂に走らないように十分注意してください。例えば、facebookで少し過激な内容の投稿をしたとしましょう。「いいね!」がたくさん集まります。でも、皆さんは本当に毎回「いいね!」と思ってボタンを押しているでしょうか。私は「投稿を読みました」くらいの感覚です。

お世辞や義理で「いいね!」をする場合もあると思います。それを自分に対する熱烈な支持だと思ったら大きな間違いです。特に、意味政治的主張・民族的主張が絡む投稿などは非常に危険で、発言がどんどんエスカレートしてしまい、気づいたら周りの人は引いている、ということも少なくありません。

どんな情報発信であっても、自分の社会的地位を壊すようなことは不必要です。強い主張がしたい、する必要があるとしても、ある種の上品さを持ち合わせていた方が良いでしょう。

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地域に暮らすからこそできる発信を

情報発信には様々なノウハウやコツがありますが、最大のポイントは繰り返し練習することです。地域から発信している人は世の中にたくさんいますが、新聞記者などに比べて伝達能力の差が出てくるのは、修練の差だと思います。

どうすれば次はもっといい発信ができるのかを、考えていきましょう。その上で、地域に住んでいるからこそ分かる「真の姿」を発信してください。

東京のメディアが切り取っていく情報は、東京の都合で書かれていることも多いです。

例えば、震災で大きな被害を受けたある町について「復興の超優等生」と謳う記事を東京方面で良く見かけます。しかしその町に行ってみると、実際は人口が大幅に減り、危機的な状況です。東京の記者の目線だけでは、それが分かりません。取り繕われた、美しい現実しか見せられないからです。地域の人たちだからこそ分かる課題や実情、そして可能性の部分を、しっかり発信してほしいと願っています。

 

<講師プロフィール> 

岡本真(おかもと・まこと):1973年生まれ。編集者等を経て、1999年、ヤフー株式会社に入社。2004年にはYahoo!知恵袋を企画・設計を担当。2009年に同社を退職し、1998年に創刊したメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)を母体に、アカデミック・リソース・ガイド株式会社を設立。現在、代表を務める。著書に『ウェブでの〈伝わる〉文章の書き方 (講談社現代新書)』『未来の図書館、はじめませんか?(青弓社)』など。

 <講座で使用した資料はこちらからご覧いただけます>

 

本講座は、復興庁の「新しい東北 情報発信事業」に選定された「ローカルジャーナリスト育成講座」の一環として行われています。