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新聞記者のおごりに気づかされたキャンプ〜ジャーナリストキャンプ参加者レポート

6月19日(金)〜6月21日(日)に行われた「ジャーナリストキャンプ2015浜松」では、参加者が静岡県浜松市を取材して、その成果を「THE PAGE」で公開しています。

参加者レポート第3弾として、福岡範行さんのレポートをお届けします。福岡さんは浜松のB級グルメ浜松餃子」を取材しました。作品は「浜松餃子なんて無い? 餃子日本一の裏側(上)──ウナギの敵だと思われて」「浜松餃子なんて無い? 餃子日本一の裏側(下)──ブーム喜べない餃子店」です。新聞記者の福岡さんはキャンプを通じて、どう考え方が変わったのでしょうか。

たぶん心のどこかで、「新聞記者は取材のスペシャリストだ」と思っていました。それは、おごりだとジャーナリストキャンプで気づかされました。記者歴10年目。話を聞き出し、記事に組み立てるノウハウは知っています。でも、それだけ。取材の狙いの絞り方も、人の好奇心を刺激する記事の表現も、写真の撮り方も、自分はいわば「新聞の常識」という狭い枠にとらわれていた。それを外せば、もっと自由で幅広い伝え方があるんだと、思い知らされました。

▼開沼流「仮説思考」でB級グルメの陰をあぶりだす

経験者に地獄と呼ばれるジャーナリストキャンプ。本番は3日間ですが、実際は事前も事後も、きついです。私が特に苦しんだのは、事前準備でした。

キャンプ開催地の浜松には縁もゆかりもありません。日々の取材でネタを引っかけるという手法も使えず、どこを深掘りすれば面白そうか、まったく見当が付きません。なのに、事前レクでは取材テーマを発表しなくてはならず、その場の雑談で出た「浜松餃子」に決めました。

本番に向けて担当デスクの社会学者・開沼博さんから与えられた宿題は、記事で解き明かそうとする普遍的な「問い」と、その答えにあたる意外な「仮説」を文字にすること。浜松餃子への問題意識すら皆無なのに、書けるわけがありません。

必死で過去記事や関連する統計を調べました。かすかな取っ掛かりを求め、あの手この手で取材先を探した結果、B級グルメの陰をあぶり出す記事になりました。意外なところにも掘るべきニュースはあると実感すると同時に、普段は偶然拾ったネタしか書けていない自分に気づき、反省しました。普遍的な問題を探し、見極める視点を持つこと。ジャーナリストには当然の心構えの大切さが、キャンプでようやく身に染みました。

▼業界の先行きが不安な新聞記者こそ、ぜひ参加を

記事を書くとき、開沼さんに言われたのは「情景描写や自分の感想も交えて、だらっと書いてください」。要素をコンパクトにまとめる普段の記事とはまるで違います。他の参加者の記事を見ると、一見無関係なネコの描写から書き出したり、バリエーションの違う大量の写真を使ったり。そんな手があるのか、とうなりました。プロもアマも、多彩な立場の参加者が集っていたから、多くの刺激をもらいました。

それは、本業にも生きました。私が担当する若者向けの特集紙面で、キャンプでの体験も交えて記事を書きました。タイトルは「若き編集長の悩み」。新聞業界の行く末に対する不安を赤裸々に書きつつ、ほぼ全編独白でまとめました。思いっきり主観的な話にしてみる手法は、キャンプで学んだこと。読者に響く記事かどうかを常に議論していたキャンプでの日々を思い出しながら書き直すうちに、そこに行き着きました。20代の読者からは「こんな冒険ができるなんて新聞もまだまだ希望あるな!と思いました」といううれしい感想も。その後も、紙面と動画のリンクなどの試みを始めつつ、そうした挑戦を特集以外の紙面に展開する方法も模索しています。

新聞の先行きに不安を感じている記者は、ぜひこのキャンプに参加してほしいです。他のメディアに移るにしても、新聞の大幅な改善に挑むにしても、新聞記者として身に着く取材スキルには偏りがあるんだと自覚した方がよさそうです。メディアの置かれた環境が激変する時代、記者にも変化は求められます。「新聞の常識」にとらわれていては、新しい道はなかなかひらけない。そんな状況を打破するヒントとの出合いが、キャンプにはあります。その種に気づき、芽吹かせ、育てることができるかどうかは、あなた次第です。

<福岡範行プロフィール>
ふくおか・のりゆき 北陸中日新聞報道部記者

<関連リンク>
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