#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

プロ同士が力を合わせる醍醐味 32人が感じた「異業種コラボ」の難しさと面白さ

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が11月30日、12月1日に開催した「データジャーナリズム・キャンプ」のレポート後編では、アイデアソン&ハッカソンに挑んだ"猛者たち"の様子をご紹介します。ヤフーニュース編集部の伊藤儀雄さんによる取材・執筆です。

チーム分けは当日発表。顔を合わせるのはこの日が始めて。お互いがどんなスキルを持っているかも分からない。職種が違うので「お作法」や考え方も全然違う。テーマは自由。それでも1か月後には明確なアウトプットを迫られる―。文字にすると尻込みしてしまいそうな企画に果敢に挑戦した32人。8チームに分かれて長机に向かうと「さあ、やるぞ」「何ができるだろう」といった様子。「異業種コラボ」の未知なる試みにわくわくしているような、そんな姿が見られました。

■新卒からベテランまで――多様な思いが交差

チームごとの議論がスタートすると、まず始めたのは自己紹介。ある参加者は「お互いのスキルセットとマインド、意欲を確認するところから始めました。それがわからないままだと、何ができるのかが想定できないですから」。
また別の参加者は「締め切りまでの1か月間、どのくらいの時間をコミットできますか?」とチームのメンバーに聞いたそうです。
チーム内のモチベーションの差がアウトプットを左右する。新卒間もない若手から、10年、20年と専門のキャリアを重ねた人まで多様な参加者が思いを交差させました。

自己紹介が一通り終わると次はアイデアを出し合う段階に。
ポストイットにアイデアのピースを書いたり、持ち込んだノートPCやタブレットで参考になるサイトやデータを見せ合ったりと、アイデアを膨らませていきます。「いろいろアイデアは出るんですが、『ニュース性』という意味で考えると難しいですね」。そのデータを分析してアウトプットをすることで社会にどういうインパクトを与えられるのか、という点で苦慮している様子がうかがえました。

■国のデータ探しは「悪魔の証明

出たアイデアが「モノになる」のか当たりを付けるために、使えるデータをその場で探していくチームが多かったようですが、そこでよく聞かれたのが国のデータ公開に対する「不満」でした。
ある参加者は「アイデアはたくさん出ますが、そのデータがあるかどうかは別の話。政府のデータは体系的にインデックスされていないので、データが存在するかどうかを調べるのにコストがかかる。『悪魔の証明』みたいなものです」と話します。
別の参加者も「国のデータのPDFの多さに閉口しました。国のデータは『探しにくい、わかりにくい、見づらい』。サイトをめぐっていてもバラバラでどこにあるのかわからない。もうちょっとどうにかならないんですかね」と嘆いていました。

キャンプが終わった後の12月20日、政府は保有データを無償で利用できるデータカタログサイト試行版を始めました。政府も公開データの充実に徐々にですが動いています。データジャーナリズムの取り組みが広がり、公開データの不便さ、不十分さが可視化されることで、政府の歩みをさらに進めることにつながるかもしれません。

■異質な発想の掛け合いで生まれるアイデア
熱い議論が交わされた2日間。いよいよチームごとのテーマ発表です。

「オリンピックで儲かる人、儲からない人」「『失われた20年』は本当なのか」「『幸福な死』の理想と現実」など、どれも興味深いものばかり。模造紙やPCを使ってテーマを説明します。中にはすでにビジュアルのプロトタイプを制作したチームも。

過去の新聞記事などから地域の課題と対応する政策や事例のデータベースを制作する提案をしたチーム。発表者は「データジャーナリズムの印象と外れるかもしれないが、政策形成に関わるデータを扱いたかったんです。『データがドリブンするメディア』をつくりたいと思っています」と話しました。このチームに参加した地方紙の記者は「これは新聞の新人教育にも使えるのではないかと思いました。新聞社では『現場100回』とある意味、前近代的な記者教育がされています。社会問題を体系的に学ぶアプローチとして効果がありそう」と、展望を語りました。

発表を終えた参加者が口々に語ったのは「異業種コラボ」の難しさと面白さ。ある新聞記者は「記者はやっぱり締め切りを考えてしまいます。なにをするにしても『データが手に入るか』が出発点になる。ところが他のチームの人たちの話を聞いてみると『なにをやりたいのか』ということが先にある。記者の発想と違うというのが面白かった」。

あるエンジニアは「それぞれ得意分野の違うタレントが集まって、ひとつのことを協力して進めることができるのが、データジャーナリズムの醍醐味だと思います。違う職種の人たちと協力することで、できることの幅が大きく広がる。『共通言語』がないので難しいところはあるけれど、自分ひとりでは到底できないことができそうです」と熱っぽく語りました。

その後も、六本木の会場にはほとんどの参加者が残り議論を続けていました。これから1か月間、どのように作業を分担していくかを話し合うチームも。早速Facebookのグループを作ってメンバーのやり取りを始めていました。「これからが本番だ」。ある参加者がつぶやくように話しました。当然ながら全員普段の仕事がある中で、4人でコミュニケーションをとってひとつのアウトプットに到達しなければならない。その困難さに立ち向かうように、参加者たちは顔を上げて会場を後にしました。

アワードは27日。いよいよ参加者たちの作品が公開されます。
(伊藤 儀雄)

【ライブ中継あり!】
27日19時から開催するジャパン データジャーナリズムアワードは、当日プレゼンの様子をインターネットで生中継いたします。以下のURLからぜひご覧ください。
http://www.ustream.tv/channel/ジャパンデータジャーナリズムアワード2013>
※電波や機器の状態により放送を中止する場合がありますのでご了承下さい。

【レポート前編はこちらから】
異業種の猛者たちが集うデータジャーナリズム「天下一武道会」