#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

ネット生中継、見逃していた「集客」の視点

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が1月12日に開催したワークショップ「記者諸君!動画ニュースを『ネット中継』してみよう!」の様子を、大学生の長谷川裕さんにレポートして頂きました。

【概要はこちらから】

「未知の領域だった」

自らをウェブで生中継しながら姿を現すというという斬新な登場をした、ニコニコニュース前編集長、亀松太郎さんは、講義後の質疑応答の際にネット生中継についてこうおっしゃっていました。ネット生中継で最低限これはしないというルールは?という質問に対して、亀松さんは、「自分たちがやっていることが経験として整理されておらず、未知の領域だった。初期だからこそルールがなく、やっている時ははっきりわからないままで現場の判断で行なっていた。」と述べました。ネット生中継という誰も踏み込んだことのない領域に果敢に飛び込んでいった亀松さんのお話に不思議と皆惹きつけられていました。

普段は大学生として、大学でメディア論を勉強している私は、昨年11月のネット党首討論会などに代表されるようなネット中継に対して強い関心を持っていました。しかし、中継の映像を見ることは出来ても、現場で実際に中継されている方のお話を聞く機会はほとんどありません。実際の現場でどのような困難や苦労があり、そして今後のネット中継はどのような方向へ進むのか。今後ホットなトピックになるであろうこの分野について、誰よりも豊富な経験をなされているニコニコニュース前編集長、亀松太郎さんをワークショップの講師にお招きすると聞き、迷わずフェイスブックの参加ボタンを押しました。

今回のワークショップにおいて印象に残ったことは大きく分けて2つあります。

1点目は、ウェブ生中継に対する課題を具体的に知ることが出来たということです。特に「中継にどれだけ人を誘導できるか?」という事が今後の最大の課題となるという点は印象に残りました。編集されたアーカイブ映像はアップされたらネット上に残り続けるため、面白ければ視聴者数がどんどん増加する。しかし生中継はその場限り、その瞬間だけ。だからこそ、その生中継に人を呼び込むのが難しく、コンテンツが始まる前にどれだけ告知できるかが大事だと亀松さんはおっしゃっていました。そのための対策として討論番組ではゲストを呼ぶ際に、Twitterのフォロワーの多い人を入れて生中継の告知してもらう、ということを行なっているそうです。放送されたコンテンツの中身ばかり注目していた私にとって、「集客」という点は新鮮であり、見逃していた点でもありました。

2点目は、「コンテンツの切り口」の難しさについてです。後半に行われたグループワークにおいて、実際にウェブ生中継番組の企画を考えました。その際に「コンテンツの切り口」についてかなり悩まされ、ウェブで中継する企画を立てることの難しさを、身に沁みて感じさせられました。

グループワークでは「つっこまれやすいニュース生放送」というお題で、タイトル、媒体、企画内容、対象者について考えるといったワークが行われました。前半の亀松さんの講義において指摘されたウェブの生中継における特徴を留意しつつコンテンツを絞り込んでいきます。ウェブの生中継における特徴については以下の5点を挙げていただきました。それは、1.双方向性があり、中継を見ている視聴者の意見までコンテンツとして取り込めること。2.ノーカットで編集が無いこと。3.放送法なやスポンサーの縛りがなく、自由なテーマを自由に扱えること。4.テキストを使用出来、文字や関連情報をリンクで簡単に関連付けられること。5.小規模な機材と人で実現可能であること、です。

これらをもとに、マスメディアではなく敢えてネットで配信することのメリットは何か、突っ込まれやすいとはどのようなことか、ディスカッションが行われました。既存の番組にどう違う切り口を持ってくるか、どうやったら面白いと視聴者に思ってもらえる番組が作れるのか。気がつくと凡庸な切り口や、ありふれたものをになりがちで非常に苦労すると同時に、現場で中継をするということしか考えていなかった私にとって、そもそも「何をどのように中継するのか」という苦労を少しでも知ることが出来、良い機会となりました。

最終発表では、「エロ本で学ぶミャンマー市場」「全国紙特ダネバトルロワイヤル」「今日の魚24時」など、ユニークかつ、面白い切り口の企画案がたくさん発表されました。

今後スマホ対応が進み、回線・ハードウェアが進化することで、どこでも生中継を見られる環境が増える。それと同時に、中継機材の環境、回線環境の低価格化により誰でもどこでも中継できるようになる、ということを亀松さんは今後の見通しとして述べていました。発信者側が望めばなんでも中継出来る時代が、そう遠くない将来やってくる中で、発信者として、価値があり、そして見る人にとって面白いコンテンツを発信するヒントを多く得ることが出来たワークショップだったと思います。

ワークショップで得た多くの気づきを糧に、たくさんの人に見てもらえる「つっこまれやすい」ニュースを自らの手で発信できるよう、今後も考えていきたいです。
学習院大学・長谷川裕)