#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

”愛を伝えるのは技術だ”記者が学ぶ写真を通した想いの伝え方

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が11月10日に開催した「フォトジャーナリストから学ぶ『写真で伝える』ワークショップ」の様子を、共同通信社記者の耳塚佳代さんにレポートして頂きました。
【概要はこちらから】

普段、記者として文章を書くだけでなく、取材現場で写真を撮る機会も多い。記者1年目のときデスクに「この写真なら、ない方がマシ」と言われたのがくやしくて、まずは形から!とけっこうな値段のする一眼レフを自腹で購入したものの、なかなか腕前は上達しないまま。一線で活躍するフォトジャーナリストに直接写真を教えてもらえるチャンスがあると知り、すぐにフェイスブックの参加ボタンを押した。

印象に残ったのは、「愛を伝えるのは技術だ」という講師の安田菜津紀さんの言葉。文章であれ写真であれ、見たことや聞いたことをいかに他者に伝わる形にできるかは、相手の想いを託された記者の技量にかかっていると思う。私自身、様々な取材で聞かせていただいた体験や溢れそうな感情を、うまくアウトプットできないことに歯がゆさを感じることが何度もあった。聞いて、感動して、涙を流しても、それが他の人に伝わらなければただの自己満足だ。

ワークショップでは、参加者が提出した写真の批評のほか、構図の取り方やF値の設定など具体的な技術についての講義もあり、さっそく家に帰って試してみた。ファインダーを縦横それぞれ3分割した線の交点に人の顔や目を持ってくる、物が流れていく方向や目線の先に空間をつくる・・・など、少し意識するだけで格段に良くなった(気がする)。情報をたくさん入れたいときはカラーで、メッセージをより集約したいときはモノクロで撮る・・・など、時と場合によって様々に設定を変えるのも効果的。今まで自分がいかに何も考えずにシャッターを押していたことか。

被写体と向き合うときの心得も教えてもらった。例えば、特に子どもを撮影するときは、腰を落として彼らの目線の下から撮ってみるよう心掛けること。確かにごっつい一眼レフを持った人間が上からパシャパシャやったら、それだけで威圧感を与えるし、いい気はしない。普段写真を撮らせてもらうとき、自分は相手にどう接しているだろうか?限られた取材時間の中で、早く、うまい写真を撮らなきゃと焦って、ファインダー越しの相手をリスペクトする気持ちがおざなりになっていなかったか。「前提として一番大切なのは、どうやって人に向き合うかだ」という安田さんの言葉にはっとした。

初めは、より実践的な写真の技術を身に付けたくて参加したワークショップだった。でも、同年代の安田さんが写真というツールを通じて、カンボジアやフィリピン、東北の被災地で、悩みながらも目を背けずに人々と向き合ってきた体験を聞けたことも、私にとって大きな刺激だった。

ことし8月、遅ればせながら初めて岩手県大槌町被災地を訪れた。今も残る震災の爪痕を前に無力さを痛感すると同時に、自分が書いた記事が果たしてどれだけの役に立つのか、自信がなかった(その時に撮った写真もお世辞にもいいとは言えず、今でも悔いが残る)。けれど、「写真それ自体の力はそんなにない、と私は思う。でも写真を通してつながった人たちの力は大きい」という安田さんの信念にとても勇気づけられたし、記者という仕事をしている以上、伝える努力と自分の技量を磨くことは怠ってはいけないとあらためて感じた。

そして、ワークショップ終了後は参加者との懇親会も設けられ、楽しい時間を過ごすことができました。赤ちょうちんの焼き鳥屋での2次会で安田さんと私がホッピーを飲み続けていたところ、男性陣に「おっさん」呼ばわりされたのはちょっと心外でしたが・・・(笑)安田さん、JCEJのみなさん、本当にありがとうございました。
共同通信社記者・耳塚佳代)

【参加者レポート】

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