#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「JCEJ×GLOCOM データジャーナリズム実践第2弾 データ発見ワークショップ」を開催しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は、9月1日(土)、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)と共同で「JCEJ×GLOCOM データジャーナリズム実践第2弾 データ発見ワークショップ」を開催しました。

前回開催したJCEJ×GLOCOM「データジャーナリズム実践 データから社会問題を発見する」では、データジャーナリズムの実践に向けたアイデアを練りましたが、今回は、データジャーナリズムに必要なデータを整備することをメーンにしました。開催日の「防災の日」(9月1日)にちなんで、インターネット上の防災に役立つデータを探しました。

今回は前半にクロストーク、後半にワークショップを行いました。
クロストークでは、JCEJ運営の赤倉、国際社会経済研究所の東(あずま)富彦さん、オープンストリートマップファウンデーションの東(ひがし)修作さん、GLOCOMの庄司昌彦さんが「防災とメディア:防災のために何を伝えるか」をテーマに意見交換しました。

■防災とは

まず、JCEJ運営の赤倉から防災についての説明がありました。日本における防災の取り組みは防災基本計画に定められており、国土交通省内閣府などに豊富なデータがあります。最近の方針では、「防災」から「減災」へと移行しつつあり、災害が起きる前の対策を重視するのが基本になりつつあります。ITを防災に役立てようとする動きは東日本大震災以降に活発化したものですが、例えば最近では、IT防災訓練といったようなものがあります。

■4つの課題

また、災害時にITが力を発揮するために4つの課題が挙げられました。

 フォーマットやAPIなどの課題 

  • 情報ソース

 政府からいかに必要な情報を引きだすか

  • 環境や文化の違い

 スマホを使ったことがない人にどう対応するか

  • コミュニケーションとコラボレーション

 コミュニケーションエラーでうまくいかないことも多い

これらの課題に対応していかなければいけません。


■不動産屋さん的なデータの見方

東(あずま)さんは、仕事の一環としていくつかの情報を組み合わせて評価を下す、不動産屋的な立場からデータを収集しているそうです。国土交通省ハザードマップポータルサイトでデータを出しています。洪水や高潮などの個別情報を把握することはできますが、地域情報などと組み合わせなければ実態は見えてきません。

■防災と地図

東(ひがし)さんからは、防災と地図についての説明がありました。地図は、文字や数字ではわかりにくい気づきが得られるという点で使いやすいものです。地図とオープンデータを重ねると、仮に5メートルの津波が来たとすると、六本木では津波の心配はないが、麻布十番では危険かもしれない、ということがわかってきます。

■事前にしなければならないこと

庄司さんは、公共機関は「逃げなさい」と言うが、そこから先は自分で調べなければいけない状況になっていることを指摘しました。どこへ逃げるのかは、事前に行政と連携して把握しておかなければいけません。東(あずま)さんは、近くにガスタンクがあることを把握していないと、逃げようとして巻き込まれるということも十分あることを指摘しました。東(ひがし)さんは、地図づくりが防災に役立つと言います。特にサラリーマンは自分の町をうろうろしないので、把握するきっかけになるそうです。

後半は、1組3、4人で記者、アナリスト、エンジニアにわかれて実践的なワークショップを行いました。防災に役立ちそうなデータを発掘し、そのデータを使った防災企画を考案してもらいました。以下で各グループの発表を簡単にまとめました。

■1家に1枚!マイ避難経路マップ(集めたデータ数:6)

地震発生時に落ち着いて避難場所に行けるようにするため、「マイ避難経路マップ」を作成し、避難所や避難経路情報を覚えておけるようにする。(マイ避難経路マップ例国土交通省ハザードマップや、内閣防災情報の地震のゆれやすさマップなどのオープンデータを基に、住民が自由に利用できるようにする。安心・安全情報にはブルー、危険情報には赤のピンを立てる。ただし、今回調べたオープンデータはすべてPDFだったことから、データを扱いにくい。

■人の気持ちは冷める(集めたデータ数:10)

東京都の防災マップや、液状化予測を基本にして、マルチ防災マップを作成する。河川の情報といった緊急のものだけでなく、公衆電話、自販機といった情報も地図に載せていく。普段から使ってもらえるのではないかと考えた。データは、河川のリアルタイム情報、ライブカメラまとめサイト、NTT公衆電話の配置のマップなどを集めた。

■災害による帰宅困難者支援のために(集めたデータ数:5)

帰宅困難者が出てくる情報を想定した。震災時、携帯電話が使いにくい状況の中で、今いる場所や避難する場所が安全かはわからない。そこで、帰宅困難者支援マップ・アプリを作成する。使用できそうなデータとして、国土交通省の土地分類基本調査がある。安全な場所を推測できるが、データがPDFという難点がある。また、意外にグーグルマップが有効だ。自転車屋やコンビニなどの情報をAPI経由で取得できる。また、自転車大好きマップで、トイレマップや自転車ルートを取得できることも分かった。

■台風をやりすごすための防災情報(集めたデータ数:6)

風の強さ、交通機関の情報、冠水情報を調べた。素早く避難できない社会的弱者や「風速:○/sec」といった数値の意味がわからない人たち向けに、どんなものが飛ばされるのかを文章や絵をつかって表現したり、接近中の台風と同規模の過去の台風の情報を知ることができたり、水位が上がり、雨量が増えることによる被害情報を知ることができたりする。

■災害弱者を助けよう(集めたデータ数:12)

災害時に、社会的弱者にいかに避難してもらえるかを考えた。外国人、障がい者、高齢者について調べた。
外国人は、東京都の国際交流委員の情報があった。
障がい者に関しては、障がい者向けサービスの事業者がどのように登録されているのか調べた。障害福祉サービスサイトで一覧することができた。特に、在宅訪問事業者から障がい者の情報が把握できるのではないかと考えた。また、みんなのバリアフリーマップというものも見つけた。日本全国の地図から、障がい者用のトイレの有無を個人で登録できるものだ。
高齢者については、東京都のシルバー交番が設置されていて、その一覧を見つけた。また、認知症サポート員の一覧と認知症に対する相談窓口の情報を見つけた。健康の方かもしれないが、シルバーパスの発行窓口に関する情報なども分かった。

最後に、庄司さんは、「今回のアイデアをこのままにしておくのはもったいないので、誰かが実現できるようにしなければならない。また、オープンデータのなかにはPDFで使いにくいものもあるという指摘を受けたので、しかるべき人に伝わるようにしなければならない」と締めくくりました。

今後、2回にわたって、参加した方のレポートを紹介しますので、ぜひご覧ください。
(学生運営・福武 亨)

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