5月19日、山本大介さんを講師にお迎えして行ったワークショップ「魅力的なポートレート写真の取り方 〜ソーシャルアイコンを楽しんでみよう〜」の感想レポートを参加者の竹下隆一郎さんに書いて頂きました。
わたしの自宅には、iPhone4が2台、ガラケー(国内産の携帯電話)が2台、韓国・サムスン製の携帯電話が1台あります。どれもカメラが付いていて、4歳になる長男は、よく手に取ってはパシリ、パシリと写真を撮っています。
これが抜群にうまい。わたしが読書をしている姿、キッチンで妻と話をしている様子、あるいはお気に入りの熊のぬいぐるみ。うちの子どもは、生まれつきカメラの才能がある神童なのか、携帯電話の性能が良いのか。答えは自ずと明らかでしょう。
5月19日に開かれた「魅力的なポートレート写真の撮り方〜ソーシャルアイコンを楽しんでみよう〜」に参加しました。講義を聞いていて考えたのは、大人にしか撮れない写真とは何だろう、ということでした。
講師のkumadaiworksさんは写真の大事な要素として、被写体とのコミュニケーションが7割、場所選びが2割、技術が1割だとおっしゃっていました。いきなりレンズを向けるのではなく、「きょう、朝飯なに食いました?」と問いかけてみる。服装を褒めたり、撮影する場所をなぜ選んだかを相手に説明したりする。会話が弾んでくると相手がレンズを意識しなくなり、自然な表情が撮れるそうです。講義のあとのワークショップでさっそく試してみました。私の被写体は同じく参加者の清嶋直樹さん。
初対面だし、清嶋さんが遅れて到着されたので挨拶もしていませんでした。レンズを向けながら趣味のことを聞き、仕事の話をし、その日の天気の話をしました。清嶋さんが鉄道好きだと知り、JR九州の観光列車などの内装を手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏の独創性について意見交換をしたときにシャッターを3度切り、渾身の1枚が撮れました。
kumadaiworksさんに褒めていただいたのですが、何より嬉しかったのは清嶋さんから「良い写真だから後でメールで送ってくださいね」と言われたことです。いま、日本の携帯電話の契約件数は1億2820万5千件に達し、携帯電話を「1人1台」持つ時代になりました。デジタルカメラは数万円で手に入り、ボタンさえ押せれば幼児でも写真が撮れます。
大人にしか撮れない写真は何だろう。再びそんなことを考えます。
小さな子どもがレンズを向ければたいていの大人は微笑みます。もしかしたらプロのカメラマンにも見せない優しい顔をレンズが捉えるかもしれません。
ただ、被写体の真剣な眼差し、憂いのある笑み、あるいは、なかなか人に見せない色気を引き出すことは、できるでしょうか。趣味の話をしているときの、楽しくもどこか知的な笑顔を切り取ることはできるでしょうか。単なる仲の良さを超えた、大人と大人との社交があって初めて生まれる表情があるように、わたしには思えます。今回のワークショップの参加者の一人、宮田浩史さんは被写体の大学生の女性にブランコに乗ってもらって写真をとっていました。子どもには思いつかない発想ですね。いえ、正確に言うなら「子どもにはできない交渉術」です。世間話をして打ち解けて、ちょっと無理なお願いを聞いてもらう――社会で他者と交流しているからこそできるコミュニケーションです。
被写体を真ん中に置く「日の丸」、あえて右端や左端に寄せる「三分割」。
すぐに使えるテクニックが満載の会合でした。そして32歳のわたしは大人になって結構時間がたちますが、「子どもではない」とはどういうことか。少しはっきりとした1日でもあった気がします。
(報告:竹下 隆一郎)
<関連>
- 山本大介さんのHP:kumadaiworks.jp
- 参加者によるレポート:相手の魅力が溢れる瞬間とは 参加者報告 vol.2
- 学生運営によるレポート:ワークショップ「魅力的なポートレート写真の撮り方〜ソーシャルアイコンを楽しんでみよう〜」を行いました
- 撮影した写真の一部がFacebookのイベントページ(こちら)にアップされています