#JCEJ 活動日記

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalists)の活動を紹介しています!

「データジャーナリズムは仕事の基本」参加者報告vol.1

3月3日に東海大学で行った「ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム2012」の参加者報告を順次掲載していきます。第一弾は、データジャーナリズム萩原雅之さんトランスコスモス株式会社理事 エグゼクティブリサーチャー)による「マーケティングリサーチの最新手法をジャーナリズムに活かす」のセッションを扇強太さんに報告していただきます。

データジャーナリズム、言葉として聞いてはいたけど、どんなものかはあまり知らなかった。自分が今後取り組もうとしていることと、今まで経験してきたデータ分析の世界がミックス出来るならば、それはキャリアの整理にもなるし、ひとりのビジネスマンとしての経験を活かすことが出来るかもしれないと考え、ヒントやトレンドを探す気持ちから、本セッションを受講した。

セッションが始まって、テーマであるマーケティングリサーチとジャーナリズムの共通点を指摘があった。対象を洞察し普通にしていたら見えないモノをいかに見せていくか、という観点や過程は、非常に似ている、と言う趣旨の発言だった。確かに言われてみるとその通りであり、どういった仕事も基本は共通点があるのだな、とプレゼンのつかみとしては非常に納得のいく入り方だった。

次に、「知る」、「伝える」という2つの観点で細かくご説明いただいた。全ての説明を覚えているわけではないのだが、印象に残った点をいくつか紹介する。

  • オープンデータの活用について

日々の生活や仕事で得られている大量のデータ、いわゆるビッグデータの活用を国土交通省のe燃費を事例に挙げて解説いただいた。以前と違いネットを介してデータが非常にたくさん貯まる。その結果、以前のように限られたデータから仮説を立て検証するのではなく、蓄積された莫大なデータから1人の消費者をリアルに思い浮かべる事が出来るレベルにまで来ているという話だった。

分析という仕事上での一般的に行われているであろう、仮説を立ててインタビューや観察からそれを実証していくという今までの王道の手法が変化していることに驚きを覚えた。ビッグデータを使うことで、最初からある程度精度の高い仮説や落としどころの見当を付けることが出来るということは、それだけ仕事のスピードが上がるということ。今まで得たことが無い膨大なデータが仕事のやり方を変えつつある、となんとなく感じていたが見過ごしていたことを再認識。

ソーシャルメディアで膨大な消費者行動・会話ログを収集・分析するというのは、ずっと言われ続けている事であるが、お話にあったツイッターの呟きの推移というか、ソーシャルメディアで語られている評判を把握する、という具体例で良く理解することが出来た。

例えば、東日本大震災の後のツイートに「結婚したい」「抱きしめたい」等が増えている、ということらしい。これは昨今の結婚式の増加や宝飾品の売り上げが伸びている等の経済現象の原因の一部を説明できている。
こういったソーシャルメディアの動向を常にキャッチして自分のビジネス、あるいはジャーナリストとしての取材の素材やテーマに織り込んでいくというのは、今後必要とされることなのだと思う。ソーシャルメディアとビジネスの結びつきは、フェイスブックにファンページを作って集客する、というようなことばかりがスポットが当たっているような気がするが、現実に流れているデータにもっと向き合うという基本の地道な作業が大事なのでは?と考えさせられた。

ただ、このセッションを通して全体をよくよく聞いてみると、データジャーナリズムという言葉は特別新しいことを言っているわけではないとも思う。
①データを見つける ②そのデータの意味を考えて判断する、つまり分析する ③データを分析した結果を効果的に見せる ③意見を集約し次に何が起こるかを見いだす、というマーケットリサーチャーの一連の仕事の流れは、データという言葉を取材対象と置き換えればそのままジャーナリストのそれに置き換わる。

ただ単純にデータジャーナリズムの事例を解説するだけではなく、一見違う分野と思われがちなマーケットリサーチとジャーナリズムの共通点を見いだし、仕事の基本は何かということをアナリストの立場から萩原氏は主張していたと思う。それに僕は気づかされたし、出席者も感じたかもしれない。それは、ジャーナリスト・エデュケーションという今回の趣旨に合致した事であり、意義深いことではないだろうか。

データジャーナリズムと言う最近耳にするようになった言葉を、プロのマーケットリサーチャーの立場から、豊富な事例を交えて事実を挙げてもらったことは、わかりやすかった。そして、ジャーナリストとしてだけではなく普通に物事を考えたり伝えたりする時でも、データジャーナリズムの考え方は今後外せないし、十二分に活用できることなのだと思う。
(報告:扇強太)

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